米子市出身の経済学者で7年前に86歳で他界した宇沢弘文さんと、経済評論家の内橋克人さんには共通点がある。共に世の中を動かしている私的利益優先主義を批判しながら、社会と人間の関係をより重視する共生経済への転換を提唱したこと。宇沢さんは理論で社会の骨組みを立て直そうとし、新聞記者出身の内橋さんは現実を足場に問題を告発した▼人間を私欲の塊と見なし、私欲の赴くままにしておけば「神の手」によって経済は元気になると主張する市場原理主義。この神の手は価格による調整のことだが、我欲同士のむき出しの競争は富の格差を広げ、社会を不安定にすると共生経済は警告する▼個人的な欲望も他人の共同の集合体である「社会」によって支えられて実現する共生関係。「お互いさま」で世の台所は回っている▼ジャーナリスト出身らしく警世の鐘を鳴らし続けてきた内橋さんと20年ほど前、お会いしたことがある。当時は市場原理主義に基づく構造改革ブーム。関連する政府の委員会が立ち上がっており、内橋さんも委員を務めていたものの「孤立無援です」とため息。市場原理を叫ぶ学者委員らに取り囲まれ、異端視されたという▼内橋さんが今月1日、89歳で亡くなった。宇沢さんが設計図を書き、内橋さんが現場監督を務める「共生経済棟」が完成していたら、その後の「格差拡大ビル」は抑えられたかもと思い描く。(前)