中国電力島根原発2号機がある方向を指さす佐藤幸一さん=出雲市地合町
中国電力島根原発2号機がある方向を指さす佐藤幸一さん=出雲市地合町

 島根原発2号機が原子力規制委員会の審査に正式合格したことを受け、再稼働を目指す中国電力と、安全性をチェックする自治体の協議に注目する原発30キロ圏内の島根、鳥取両県民はそれぞれの立場から賛成、反対の声を上げた。

 中小製造業が集まる松江市東出雲町。町内で金属製品の生産を手掛ける企業を経営する曽田直秀さん(54)=松江市東朝日町=は安定した電力供給が欠かせないとして、「早く稼働してほしい。審査に通って良かったというのが本音だ」と話した。

 数千人の労働者が出入りする原発があることによる雇用や消費に期待する声も根強い。松江市内などで貸し切りバス事業を営む三沢猛昭さん(42)も「立地地域に資金が投じられて雇用が生まれる。(原発の存在は)肯定的に受け止められる」と先を見据えた。

 一方、2011年の東京電力福島第1原発事故から10年以上たった今も、現状の暮らしができなくなるかもしれないリスクを抱えることへの不安を抱く人もいる。

 雲南市で農業を営む高木健次さん(69)=雲南市大東町山王寺=は「生活に電気はなくてはならないので再稼働に賛成だ」とするも、万一の事故で避難の必要が生じた場合は、東広島市へ行くことになる。「生きがいの棚田保全ができなくなるのは怖い。避難先で農業が続けられる保証が欲しい」と注文した。

 避難そのものが可能か疑問視する人からは、反対の声が上がった。

 島根原発から10キロ程度にある島根半島の出雲市地合町。「今日は北東の風。事故があれば放射性物質がすぐにこちらに来る」と同地に住む無職佐藤幸一さん(77)がつぶやいた。

 福島原発事故の前は、松江市の島根県庁と同じように10キロ圏内を含みながら防災対策の重点地域に位置付けられていなかった。市街地に通じる県道は車両の擦れ違いが難しい部分もあり「万一の際に、遅れを取ってしまう。そういう現状なら、危険な原発はない方が良い」と訴えた。

 安来市原子力発電所環境安全対策協議会で委員を務め、自宅が30キロ圏内の端にある自営業の戸谷豪良さん(54)=安来市広瀬町奥田原=も避難計画の実効性に懐疑的だ。「放射性物質が広がる事故が起きた際に避難バスは本当にここまで来てくれるのか」と不安を抱える。「本当に再稼働の必要があるのか、首長には地域の実情を踏まえて判断してほしい」と願う。

 県や市に「事前了解」の権限はないのに、境港、米子両市が30キロ圏内に入るために避難対策を求められる鳥取県。幼児から中学生まで3児を育てる主婦増田貴子さん(47)=米子市和田町=は「専門家だけでなく、市民レベルで『安全だ』と言えるかどうかで再稼働を判断してほしい」と話す。現状は「人が扱うにはリスクが大きすぎる」との思いが拭えない。

 福島原発事故という教訓がある以上、リスクを誠実に見据えた上での議論が必要だと話すのは、自営業佐々木奈穂さん(35)=松江市八雲町東岩坂。「国や自治体からは原発の安全性を強調する情報ばかりが目立つ印象だ。危険性も含めて、住民が判断材料にできる情報をもっとしっかり示してほしい」と求めた。