何度見ても奇妙な光景だと思う。「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」ー。衆院議長が天皇陛下の詔書を読み上げると、議場の議員全員が万歳をするおなじみのシーン。きのう4年ぶりに行われた▼解散によって議員は職を失うことになる。いわばテレビ中継もされる公開リストラである。やけっぱちにでもならない限り、人前でリストラされて万歳をするサラリーマンなんて、どこにもいないだろう▼庶民からすると浮世離れした慣習に法的なルールはないが、明治時代から続いているそうだ。7年前は当時の伊吹文明議長が「御名御璽(ぎょめいぎょじ)(天皇の署名と捺印(なついん))」と言いかけたところで万歳が始まり、全てを読み終えた後にやり直したため、「フライング万歳」と呼ばれた▼万歳をする明確な理由は分からないものの、天皇陛下への万歳や詔書への崇敬、内閣への降伏、次の衆院選という戦場に「万歳・突撃」する気持ちなど諸説あるようだ。一番早く万歳をした人がまた国会に戻って来られる、しっかりと大声で万歳するほど当選確率が上がるといったジンクスもあるらしい。万歳の声が大きくなったり、気が焦ったりするのもうなずける▼解散を受けた衆院選が19日に公示される。新型コロナウイルス対策や経済政策をはじめ、争点は山積みだ。党利党略、私利私欲ばかりが表に出て有権者の思いを見誤ると、再選の万歳は遠ざかりかねない。(健)