パーテーションで感染対策をした新型コロナ対策認証店の座席
パーテーションで感染対策をした新型コロナ対策認証店の座席

 新型コロナウイルスの感染防止対策を実施した店舗を認証する制度が広がっている。<下>では友人や家族と訪れることが多い居酒屋やレストランを訪ね、どのような対策がとられているのか、調べてみた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 <上> コロナ対策認証店、どんな対策?

 ▼鍋物に備えビニールシートに工夫

 訪れたのは、いずれも島根県の「新型コロナ対策認証店制度」で基準をクリアし、認証された店舗。
 

「大衆酒場串かっちゃん」の店頭。扉の中央に認証マークのしまねっこが鎮座する


 居酒屋の「大衆酒場串かっちゃん」(松江市寺町)は、他の飲食店のようなアクリル板に代わってビニールシートを天井から糸でつるし、座席周辺を囲む。アクリル板より広範囲を防護できる上、アクリル板を移動させる必要がなく、配膳の手間を最小限に抑えられる。居酒屋は酒の注文が多いため店員が配膳する機会も多い。配膳に手間取り、客に煩わしい思いをさせないようにした。
 

席に設置されたビニールシート。園芸用のさおにビニールシートを取り付けたものを、天井から糸でつった


 ビニールシートを採用した大きな理由は、秋からメニューに加わる鍋物のためだ。机で鍋を使う際はビニールシートを持ち上げ、壁際上部に設置した洗濯挟みを使って固定する。飲食をする客に不便な思いをさせないよう、工夫した。
 

壁にある洗濯挟みでビニールシートを固定すれば、鍋物を机に置いて楽しむことができるようになる


 机にあるメニュー表、小皿、灰皿は利用客が入れ替わるたびに全てを洗い、消毒して再度配置する。机を毎回消毒するだけでも大変な作業だが、机の上にある物まで全て消毒する。上田克己オーナー(53)は「消毒作業だと思わず、普通の洗い物の一つだと思ってやることだ」とこつを話す。

 換気をするタイミングは1階の座席15席のうち客が約半分を埋めるようになった時。1時間ごとに15分ほど調理場の窓を開け、空気を入れ替える。これから迎える冬に備え、換気で客に寒い思いをさせないよう、暖房器具を増やした。対策一つ一つに客への心遣いが垣間見える。

 

 ▼「やれることは全てやる」

 串かっちゃんは昨年、県内でコロナが確認されて以降、「夜の街の灯を消してはいけない」(上田オーナー)という思いで、休業することなく営業を続けた。夜の客は全くと言っていいほどおらず、苦しい日々だった。「昼から午前0時まで営業して1日の売り上げが2万円を切る日もあった。コロナ前の売り上げを100とするなら昨年は1」と振り返る。

 当初から席の間にビニールシートを設置する対策はしていたが、認証制度を知り「やれることは全てやろう」とシートを増設した。消毒の頻度も増やし、換気のタイミングを決めることで認証を得た。

 現在は徐々に客が戻ってきた感覚はあるが、コロナ前の閉店時間までにぎわった頃には遠い。上田オーナーは「できる限りの対策はした。これから鍋の季節になるので、お客さんに安心して楽しんでもらえるよう対策を徹底する」と気を引き締めた。

 

 ▼対策用に手洗い器まで?

 フランス料理店「ビストロ庵(あん)タンドール」(松江市朝日町)は、ハンバーグやパスタ、ピザといった洋食を中心に扱い、夜は酒類を交えたメニューを提供する。JR松江駅近くにあり、幅広い年代の人々が立ち寄りやすいカフェレストランだ。
 

「ビストロ庵タンドール」の外観。幅広い料理を楽しめるおしゃれなカフェレストラン


 店内の机には黄やピンク色のダンボール製パーテーションが並び、かわいらしい雰囲気。松江市の資材製造会社製を採用し、塗装した。おかみの中川真弓さんは「お客さんが少しでも楽しい気分になれるように頭をひねりました。アクリル板よりは華やかでしょ」とにっこり。
 

店内。色とりどりのパーテーションが並ぶ。島根スサノオマジック選手のサインが書かれた特製の物も
距離が近い席には小型と大型のパーテーションを両方使用する


 隣り合う席の間には大型のパーテーションを新たに導入した。店内にトイレが無いことから手洗い器を出入り口に設置し、入店と退店の際に客に利用してもらう。団体へのコース料理は接触感染の危険性を減らすため、大皿に盛りつけていた料理を人数分の小皿に分けて提供するように変更した。
 

新たに導入した手洗い器。入退店のタイミングで手を洗うことができる


 店内の窓を開けた状態で営業し、個室は部屋上部にある空間でつながっているため換気は良好。感染対策への力の入れ具合が分かる。

 

 ▼第三者目線の認証助かる

 店はバスケットボール男子Bリーグ1部の島根スサノオマジックのパブリックビューイング会場としても有名で、コロナ前はファンによる夜間の団体利用も多かった。

2017年、島根スサノオマジックの試合を見守るサポーターたち。今はこれほどの大人数が集まることは難しくなった(資料写真)


 コロナが拡大した後は夜の団体利用が激減した。新たにテークアウトの提供を始めたが、コロナ前の売り上げには遠い。中川さんは「お客さんへの声掛けは最小限にしなければならず、世間話すらできない。雑談できないのが一番寂しい」。コロナによって変わった店の雰囲気に、やりきれない思いだ。

 認証に加え、県内のコロナ感染者が小康状態になった10月以降、昼の客が徐々に戻ってきた。中川さんは「自分たちの対策が正しいのかどうか、第三者の目で確認してもらえるのは助かる。今後もお客さんに安心して利用してもらえる環境作りに全力を注ぎたい」と前を向いた。

 

 島根県の認証制度は、9月から申請受付を始め、認証を受けた店は徐々に増えているが、認証店は県内に飲食店やスナックが約5500店あるうちの204店(10月27日時点)と、全体の4%ほど。認証店が全体の4%程度にとどまる要因について、島根県の丸山達也知事は10月28日の定例会見で「島根県は都市部と比べてはるかに飲食店での感染が少ない。認証店に取り組む必要性が乏しく、スタートが遅れたため数が少ない」とした。認証店制度の開始から日が浅い上に、10月以降に県内の感染状況が落ち着いたことで、飲食店が認証されることに対する利点が薄くなっている。丸山知事は「認証制度が今後、全国の標準になっていく」とも述べ、県薬事衛生課によると、新聞やテレビの広告を通して事業者向けに制度の周知を続けるという。