山陰両県の神社が、さい銭の両替に苦労している。「ご縁」にかけて5円玉のさい銭が多く、金融機関に持ち込むと、一定枚数以上の硬貨の両替は手数料が生じるからだ。新型コロナウイルスの影響で、さい銭の単価が減少傾向にある中、神職たちは手数料がかからない枚数でこまめに持ち込むなど取り扱いに知恵を絞っている。
「手数料でだいぶ持って行かれるんですよ」
松江城二の丸にある松江神社(松江市殿町)の渡部律也宮司(67)が、夕暮れ時にその日のさい銭をまとめながら苦笑いした。さい銭入れから神具の「三宝」に移した硬貨は5円玉が少なくない。ご縁=5円の連想は全国共通だが「縁結びの地」島根ではとりわけ目立つ。
近年、全国的に金融機関が両替手数料を導入。山陰両県を営業エリアとする山陰合同銀行(松江市魚町)も2017年7月から手数料の徴収を始め、硬貨51~500枚は550円、501~千枚は1100円などと設定した。他の機関も同様の対応をしている。
例えば、5円玉を100枚持ち込むと、手数料の方が高くつく計算。渡部宮司は「どこの神社も同じ悩みを抱えている」と明かす。手数料がかからない50枚までで銀行に通うほか、釣り銭の小銭が必要な近隣の観光施設と融通し合うなど、工夫している。
従来、両替に手数料は徴収していなかったが、金融機関にも事情がある。同行営業統括部の石田恵美理副調査役は「大量の硬貨の両替には従来、相応の事務コストがかかっていた」と説明。金融サービス継続の観点から、やむを得ないと理解を求める。
さい銭として大量の硬貨が寄せられる神社は、今後どう対処すればいいのか。
明治・大正期に、祭神の武内宿禰命(たけのうちのすくねのみこと)と社殿が5円紙幣の図案となり、商売繁盛の御利益で知られる宇倍神社(鳥取市国府町宮下)は手数料対策として、さい銭のキャッシュレス化を検討している。金田祐季宮司(41)は「現金から電子化への移行期として、手数料は致し方ない」と受け止め、先を見据えた。