大学の入学試験に臨む受験生=2021年2月、島根大学松江キャンパス
大学の入学試験に臨む受験生=2021年2月、島根大学松江キャンパス

 年が明け、いよいよ受験シーズンがやってくる。試験本番が近づくと、勉強の追い込みに全ての意識が向くかもしれないが、体調やメンタルの管理も大事になる。心身の調子を整えて、いいコンディションで試験に臨むために受験生や家族が気を付けたいポイントは何か。お薦めの過ごし方や食べ物、健康管理について保健師に聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)


▷食欲がない朝にお薦めのメニュー
 島根県健康福祉部健康推進課 健康増進グループの橋本久美リーダーは「朝食をしっかりと食べることがポイント」と強調した。

  橋本リーダーのアドバイス(1) 「朝食をしっかり食べる」

 朝食を食べることで体温や血圧が上昇し、体が活動モードになる。厚生労働省の国民健康栄養調査によると、朝食を食べない小、中、高校生の割合は増加傾向にある。朝食を抜くと低体温、低血圧のままで授業を受けることになり、眠気やだるさから授業に集中できなくなる可能性が高いという。

 朝食を食べた方が良いのはなんとなく分かっているが、朝はどうしてもおなかがすかない、食べる気にならないという人も多いだろう。そんな人にお薦めなのが、みそ汁。温かいみそ汁を飲むと体が温まるだけでなく、大豆に含まれているビタミンB群の働きにより、体を目覚めさせることができる。

  橋本リーダーのアドバイス(2) 「朝、食欲がない人は みそ汁!」

 具材に豆腐や卵、肉を入れるとタンパク質を摂取でき、野菜を入れるとビタミンを取ることができる。1杯でさまざまな栄養素を摂取できるのがうれしい。橋本さんは「朝ご飯にみそ汁を1杯だけでも食べておくと、午前中の集中力や意欲、記憶力の低下を防げます」と話した。なるほど、知っていれば高校や大学生活がもっと違ったのに。

 ビタミン類や発酵食品は免疫力を高めるという。受験生にとって大切な感染症対策の点からも、日頃から意識的に摂取したい。橋本さんは「ビタミンは旬の野菜や果物、発酵食品は納豆やヨーグルトで摂取できます」と説明した。発酵食品には整腸効果もあり、腹痛や下痢といったおなかの不調の予防にもなる。

▷前日や当日は「食べ慣れているもの」が安心
 前日や当日の朝はなるべく普段通りの食事を心掛け、日頃食べ慣れていないものは避けるようにしたい。「景気づけに」と油物やカロリーが高いものを急に食べると、消化がうまくできず、腹痛と戦いながら試験を受けることになりかねない。ほかにも、カキなどの二枚貝や生ものはノロウイルス感染の原因になりやすいため、避けた方が良いとのこと。
 橋本さんは「日頃から食べ慣れているものか、食欲がない場合はうどんや雑炊、ホットミルクといった消化に良いものを食べると良いでしょう」とアドバイスした。

  橋本リーダーのアドバイス(3)
 「景気づけの油物、高カロリー、生ものは避けよう」

 当日の朝は、緊張であまり食欲がわかない人もいるだろう。橋本さんは「パンやおにぎり、おやつなど、こまめにつまめるものを持っておくと安心です」とする。食べ慣れているパンやお菓子がある人は持って行って休憩時間に食べると、脳のエネルギーとなる糖分の補給になるほか、平常心を取り戻してリラックスできそう。

  橋本リーダーのアドバイス(4)
  「当日の朝、食欲がないならパンやおにぎり、おやつを持っておこう」

▷感染症に加え、けがへの対策も大切
 受験生が特に気をつけている感染症対策。新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザ、ノロウイルスなど、ウイルスに感染しやすい冬は特に注意が必要。手洗い、うがい、マスクの着用、消毒、人混みを避けるといった基本的な対策に加え「水分補給や加湿も重要です」と橋本さん。

  橋本リーダーのアドバイス(5) 「基本の感染対策に加え、水分補給と加湿を」

 冬は空気が乾燥し、のども乾燥しやすい。のどが乾燥すると粘膜の働きが弱まり、感染症にかかりやすくなる。橋本さんは「こまめに水分をとるほか、濡らしたタオルを部屋に掛けておくのもお薦めです」と教えてくれた。寒いとつい、水分補給がおろそかになるが、温かいお茶を持参するなど、工夫して水分を取るようにしたい。

 寒さが厳しくなる受験シーズンは、風邪をひかないよう防寒にも気を配りたい。最近は学校の暖房設備が整い、寒さに震えながら授業を受けることもなくなったと聞くが、靴下や上着、ブランケットといった防寒用品は準備しておくと安心。
 新型コロナ対策で、当日の試験会場ではこまめに換気が行われる可能性がある。寒さで試験に集中できない! という事態を避けるためにも、温かい衣類を身に着けたりカイロを貼ったりと、十分な防寒対策が大切になる。

 最後に感染症だけでなく、けがにも気をつけたい。直前に足を骨折し、痛みに耐えながらの受験となった、手首を捻挫して思うように鉛筆を握れなかった、といったケースもあり、受験シーズンのけがは、影響が大きい。
 例年、大学入学共通テストの時期は雪が降ったり積もったりすることが多い。思わぬ事故やアクシデントでけがをしないよう、日頃から交通安全には十分に気をつけ、けがをしそうな危険な行動は避けよう。

  橋本リーダーのアドバイス(6) 「防寒対策とけがに気をつけよう」


 橋本さんも、息子の受験を経験したという。「受験シーズンは過剰に励ましたり、逆に無関心過ぎたりしないよう、ほどよい距離感で寄り添い、見守る姿勢を意識していた」と振り返る。受験で緊張するのは本人だけではない。受験生を支える周囲の人たちもハラハラとしている。普段通りの生活や態度を保ちながら本番に挑むことの難しさ、大切さをあらためて感じた。

島根県健康福祉部 健康福祉課 健康増進グループの橋本久美リーダー

 橋本さんは「受験=ゴールではない。例えば大学に合格して、離れた場所で一人暮らしを始める時、生活習慣の整え方やバランスの良い栄養の取り方が分かっていると役に立つ」と、受験期の体調管理の意義を話した。受験勉強に全力で取り組むことも、体調管理に気を配ることも、その後の人生の財産になる経験だと感じた。