交流拠点となるカフェの開業を目指し、仲間と改修作業を続ける葉柴聖さん=江津市有福温泉町
交流拠点となるカフェの開業を目指し、仲間と改修作業を続ける葉柴聖さん=江津市有福温泉町

 1400年近い歴史を誇る有福温泉(江津市有福温泉町)で、廃業した旅館を改装してカフェの開業を目指す男性がいる。山あいの温泉街に流れるゆったりした時間に魅せられたといい「人々が集い『有福時間』を楽しんでもらえる交流拠点にしたい」と語る。
 男性は広島市出身の葉柴聖さん(35)。島根県立大(浜田市)を卒業後、「自分の力を試したい」と有福温泉の旅館経営者らが立ち上げた会社に入り、飲食店立ち上げ事業などに携わった。しかし温泉は豪雨被害や旅館火災にも見舞われて客足が遠のき、会社は2017年に倒産した。
 江津市内の団体職員に転職後も、愛着のある温泉の力になるため構想を練った。趣のある木造の旧旅館を再利用したカフェの開業を決め、21年5月に改修に着手。趣旨に賛同した地元の会社員や教員らの協力を得て作業を進め、22年5月に「有福どりっぷ」の店名でオープンする考えだ。
 静かな山里のしっとりとした時間を味わえるよう、持参した本をじっくりと読んだり、仲間が集まってゆっくり話をしたりできる「基地」のようなイメージの店が目標。コーヒーのいれ方講座や音楽コンサートも開催したいという。
 入り込み客数が減少傾向にある有福温泉では現在、官民を挙げてゲストハウスやワークスペース、交流広場の整備などの再生事業が進む。葉柴さんは「店が有福温泉の魅力の一つになり、リピーターを呼ぶ手伝いがしたい」と意気込む。
(福新大雄)