岸田文雄首相は衆院予算委員会で、新型コロナウイルス対策として18歳以下の子ども1人につき10万円相当を子育て世帯に支給する臨時特別給付金について、不公平を是正するため給付方法の見直しを検討する考えを表明した。昨年9月以降に離婚した場合などに、子どもを実際に育てているひとり親世帯に届かないケースがあるためだ。

 中学生以下の子どもがいる世帯は昨年9月分の児童手当受給者、高校生のいる世帯は9月末時点の養育者が対象。配偶者によるドメスティックバイオレンス(DV)から逃れて別居しているときは実態に即して対応しているが、手続きが間に合わないなどの事情から受け取れない人もいる。

 目的通り、10万円が行き渡るよう制度是正を急がなければならない。しかしコロナ禍で疲弊しきった家庭をどこまで支えることができるか定かではない。それほど、ひとり親、とりわけシングルマザーの苦境は深刻さを増し、親から子への「貧困の連鎖」のリスクがあらわになっている。単発的支援はもはや限界と考えた方がいいだろう。

 抜本的な対策が待たれる。公的支援制度を知らない人も少なくないとされ、市町村が支援団体などと連携して情報提供に力を入れ、まず利用を促すとともに、貧困のほか介護や育児などに多くの問題を抱える世帯ごとに個別の支援プランを立てる仕組みを整えたい。

 昨年暮れ、内閣府や民間の支援団体などが相次いで貧困世帯に関する調査を公表した。このうち、内閣府調査は子どもの貧困を巡り、中学2年生と保護者の5千組を対象とした初めての全国調査とされ、子どもの食事や学習、進学希望だけではなく、保護者の経済、就労状況なども調べた。

 それによると、全体の11・3%が「食料が買えなかった経験」があったと答えたが、いわゆる貧困世帯の場合は、これが37・7%に上った。ひとり親世帯では30・3%、うち母子世帯は32・1%という結果だった。

 さらに進学希望について子どもに尋ねたところ、「大学またはそれ以上」と答えたのは全体で49・7%。これに対し、貧困世帯では28・0%、母子世帯で35・2%にとどまった。親の年収を考え、大学進学を諦めた人もいるとみられる。

 公的支援制度については、貧困世帯の多くが就学援助や児童扶養手当を利用しているが、生活困窮者の自立支援相談窓口などはほとんど利用しておらず、制度を知らない人も少なくないようだ。

 病気や災害で親を亡くした子どもを支援する「あしなが育英会」が奨学金を支給する高校生の保護者約4千人を調査したところ、平均月収は10万円余りでコロナ前の2018年調査から約1万円減少。2割近くが離職や転職を経験し、その半数は雇い止めに遭った。自由記述欄には「弱者は生きていてはダメなんでしょうか」「毎日、もうおわりだと感じます」などと書き込まれていた。

 シングルマザーを支援するNPO法人には「貯蓄の取り崩しと節約、息子のアルバイトで何とか生活している」といった声も寄せられている。そんな中、貧困の連鎖を解消するために何ができるか。世帯ごとの実態を十分把握し、保護者の経済状況を改善するための就労・転職も含め、包括的で息の長い支援を組み立てていく必要がある。