ブータンと海士町とをつなぎ、事業の意義を話す浜田市の関係者=浜田市野原町、市世界こども美術館
ブータンと海士町とをつなぎ、事業の意義を話す浜田市の関係者=浜田市野原町、市世界こども美術館

 ブータンと交流がある浜田市と島根県海士町が、同国の美術教育や地域振興へ協力するプロジェクトが16日、本格的に始まった。新型コロナウイルス禍で往来が難しい状況だが、オンラインなどを通じて、美術教育の大切さを伝えたり、伝統文化が息づいた地方で生活することの意義を伝えていく。 (青山和佳乃)

 独立行政法人国際協力機構(JICA)の事業の一環で、浜田市世界こども美術館と島根県海士町、一般財団法人「地域・教育魅力化プラットフォーム」(松江市母衣町)が参画する。

 浜田市とブータンは、手すき紙技術指導依頼がきっかけで交流を始め、30年以上の歴史がある。同市に滞在し、小中学校の美術の授業を視察するなどした教員が、国に戻ってまだ発展途上という美術教育を根付かせようと奮闘している。

 プロジェクトでは、オンラインなどを通じて、浜田で研修を受けた教員が、他の教員と知識を共有できる仕組みづくりを目指す。

 また、美術作品の展示や販売活動をブータン国内で実施し、収益によって美術教育に必要な資金を得られるよう支援する。

 海士町は、隠岐島前高校で培ってきた地域課題を探究する授業のブータンでの普及を目指す。

 南西部のチュカ県にある三つのモデル校で、現地の高校生と島前高校の生徒が参加するワークショップを計画。島根県と同様、経済的な豊かさを求めて都市部への人口流出が続く傾向にあるといい、同国が重視する指標「GNH(グロス・ナショナル・ハピネス=国民総幸福量)」に沿った生き方を模索していく。

 16日に3地域の行政や教育関係者をオンラインで結んだ「キックオフミーティング」があり、JICA中国センターの岡田務所長は「浜田市と海士町は人口減少や少子高齢化などの課題に取り組む先駆者」と紹介。ブータンの関係者が島根の2地域と同時に交流を展開することは「大変貴重なものだ」と意義を強調した。事業期間は2024年12月まで。