ロシアのプーチン大統領から秋田県知事に贈られた雄のシベリア猫が2月、10歳になった。名前はロシア語で平和を意味する「ミール」。多数のウクライナ市民の命を奪う暴挙とのギャップにがくぜんとさせられる。ロシア軍は侵攻直後、ウクライナ語で夢と名付けられた世界最大の航空機「ムリア」も破壊した▼今回の侵攻は専門家の間で「可視化された戦争」とも呼ばれる。多くの市民がスマホで戦闘の様子を会員制交流サイト(SNS)に投稿し、全世界に発信している。爆撃された住宅や病院の映像が、攻撃対象は軍事施設だけと主張するロシアの嘘(うそ)をあぶり出す▼ウクライナのゼレンスキー大統領も毎日のように動画を投稿して国民に徹底抗戦を呼び掛ける。欧米諸国には積極的な支援を求めるが、軍事介入による全面戦争を懸念する各国の対応はなかなか定まらない▼「ナチスが共産主義者を攻撃したとき、私は声を上げなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから」。この一文で始まるドイツのニーメラー牧師の警句は第2次世界大戦前、多くの人が自分には関係がないとの理由でナチスの横暴を傍観してきたとつづり、「そして彼らが私を攻撃したとき、私のために声を上げる人は一人もいなかった」と締めくくられる▼日本は海を隔ててロシア、中国、北朝鮮と接する。ウクライナ市民の悲痛な叫びに無関心であってはならない。(文)