東日本大震災と福島第1原発事故から4千日余りが経過した。11年という歳月は、被災者の傷を癒やすには短すぎるかもしれないが、あの悪夢を教訓に社会を変えていこうと思えば、できることがあったと思う。時間の経過を実感するため、原爆投下・敗戦から11年後の1956年の世相と比べてみた▼高度成長期に入ったこの年の流行語は経済白書の「もはや戦後ではない」と「三種の神器」(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)。ともに故人になった石原慎太郎・裕次郎さん兄弟が鮮烈なデビューをしたのも同時期で、夏には避暑地ブームが起き、長野県の軽井沢や神奈川県の逗子、鎌倉、葉山などが空前の人出に。焼け跡の時代から大変な変わりようだ。年末には国連加盟も果たした▼また原爆投下から10年後の55年には原子力基本法が成立。翌年に鳥取県と岡山県にまたがる人形峠でウラン鉱の開発が開始されるなど原子力利用への歩みが始まる。政治の世界でその後40年近く続く「55年体制」が始まった頃だ▼とにかく豊かさを追求した昭和時代の11年は変化も大きく、豊かな生活への手応えが国民にもあった。それが今では少子高齢化と人口減少にコロナ禍が加わり、頭打ちの状況が続く▼そんな中で原子力発電を推進する昭和時代からの路線のままでいいのかどうか。うまく「七転び八起き」といけばいいが、「懲りない国」になるのは困る。(己)