年度初めは就職や進学、旅行の時期。人の移動の増加が見込まれる(資料)
年度初めは就職や進学、旅行の時期。人の移動の増加が見込まれる(資料)

 新型コロナウイルスの第6波は年末年始休暇が明けた1月から全国を襲い、いまだに収束の気配が見えない。山陰両県では3月、50~100人超の状況が続き、両県ともに1月の感染者数を超えた。年度末から年度初めにかけては人の動きがさらに活発になる。山陰両県の第6波の現状を調べた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

往来増す年度初め、花見や歓送迎会での注意点は 収まらぬ山陰の第6波<下>

 

 第6波はこれまでの変異株よりも感染力が高いとされる、オミクロン株の流行によって到来した。2月には一日の全国の新規感染者が、10万人を超えて過去最大になり、まん延防止等重点措置は最大33都道府県に適用された。

 3月になり、全国の感染者数は少しずつ減り、22日、まん延防止措置が2カ月半ぶりに全面解除された。ただ、解除当初、神奈川県や大阪府の病床使用率は50%超で、引き続き全国的に警戒が必要な局面とされる。

 島根県の感染者は第6波に入った1月が2515人、2月2214人、3月は2984人。鳥取県の感染者数は1月が1924人、2月3122人、3月は2659人に上る。

山陰両県の1~3月のコロナ感染者を表したグラフ。3月の感染者数は両県とも1月を上回る

 

 ▼島根県東部で若年層の感染増

 島根県の1日当たりの感染者数では、1月21日に過去最大の191人に上った。出雲市内の児童福祉施設で18~21日に職員と児童の計54人が、益田保健所管内の事業所では18~21日に従業員計14人が感染した。

 特に松江市内で感染が拡大し、3月の感染者数は1450人と、県全体(2984人)の半数に迫る。浜田、益田の両保健所管内では3月以降、1日の合計感染者数が一桁から10人台になるなど、東部と比べて落ち着きつつあった。しかし、25日ごろから増加傾向に転じ、30日には浜田保健所管内16人、益田保健所管内16人の計32人が感染した。

 県の集計によると、人口10万人当たりの1週間の感染者数(3月27日時点)は94・0人。地域別では松江市163・8人、浜田市120・0人、益田市117・3人、大田市97・0人と、感染は人口が多い東部だけでなく、県全域に広がりつつある。

 若年者の感染が目立つのが特徴。県の集計によると、20日時点の1週間の累計(人口10万人当たり)では19~29歳が244・8人で、18歳以下の186・8人、30~49歳の112・0人と比べても数字が大きい。中でも松江、出雲の両市では3月以降、学校や児童福祉施設での小規模クラスター(感染者集団)が頻発。1、2月のような数十人規模のクラスターは減ったが、断続的に集団感染が起こった。

3月は学校や児童福祉施設でのクラスターが相次いだ。各校の卒業式は、児童同士の距離を取るなどの対策を徹底した上で行われた(資料)

 島根県感染症対策室の田原研司室長は、3連休(3月19~21日)で人の移動が増えたことが要因の一つとみる。16日に112人が感染して以降、連日減少を続け、22日には51人にまで減ったが、3連休後の23日には78人と再び増え、25~27日にはそれぞれ110、111、103人が感染した。

第6波のピークダウンや3連休により、3月下旬から人の動きが増加したとみえる。写真は資料(2018年)

 感染経路では松江市や出雲市など人口が多い地域を中心に、県外の人との会食から感染するケースが確認されだしているという。まん延防止等重点措置の解除や連休に伴う気の緩みは、感染が減らない要因になっている。

 田原室長は第5波での県の感染者数は、1日で最高45人だったことを振り返り「全国的に第5波の倍に匹敵する感染者が確認され、島根県でも高止まりが続く状況。まん延防止等重点措置は解除されたが、県外者との会食を避けるなど、まだまだ注意が必要な段階だと思ってほしい」と警戒を呼び掛けた。

 

 ▼感染拡大、鳥取全県に

 鳥取県の1日当たりの感染者数は、2月23日に過去最高の211人に上った。米子市の認定こども園で、県内最大規模の84人が感染したほか、鳥取市で2件のクラスターが発生した。

 現在、島根県と同じく3連休以降に感染者が増え、3月21~27日の一週間の一日平均は84・8人と高水準。これまで、感染者の中心は人口の多い県東部と西部だったが、3月23日には中部の倉吉保健所管内で21人を確認し、全県的な感染になりつつある。

 感染者の多い地域では島根県と同じく、学校や児童福祉施設といった、若年層が多く利用する場所での感染が目立つ。年齢層は県の集計(3月21日~27日)によると10代以下が29%、20~30代が36%と、30代以下で全体の6割以上を占めた。

鳥取県内のコロナ感染状況について説明する平井伸治知事(資料)

 平井伸治知事は29日の定例会見で、感染状況の特徴について「3月に入ってからは卒業イベントのような会食や小旅行、カラオケなどを通して陽性者が一気に増えるという例があった。長時間行動を共にし、マスクを外すことが増える場面での感染が多い」と分析した。

 鳥取県新型コロナウイルス感染症対策推進課の荒金美斗課長は「全県的に下げ止まりの傾向がある。人の動きが増える年度末、年度初めに向けて、引き続き警戒が必要な段階だ」と気を引き締める。

 

 <下>では春休み期間の注意点を山陰両県のコロナ対策担当者に聞く。