山陰両県では、新型コロナウイルスの一日の新規感染者数が3月になっても50~100人超と、予断を許さない状況が続く。人の動きが活発化する春休みや年度初めの注意点を、両県の新型コロナウイルス対策担当者に聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)
▼部活動停止や飲食利用制限で拡大防止
島根県では、2月21日~3月29日に学校や保育施設、児童クラブといった若い世代のクラスター(感染者集団)が計39件発生した。これを受け、特に10歳未満と10代の感染抑制に力を入れるという。春休み前半の3月25日~31日の期間には、県立学校の部活動を停止し、6市町も県の呼び掛けに応じた。
移動が増える時期だが、県境をまたぐ移動は帰省を含めて極力控えるよう、あらためて県民に呼び掛ける。第6波以前にも、県外からの人との会食で感染が広がった例が多いため、県は飲食店の利用を4人以下(大田市以西と隠岐は8人以下)で2時間以内にするよう求めた。4月1日には丸山達也知事が、県外から来た人たちの歓送迎会は8日以降に開催するよう県民に要請した。

県によると、コロナワクチンの3回目接種率は40・4%(3月28日時点)。やむをえず県外移動をする必要があり、ワクチンを打てない人などのため、希望者向けの無料検査を県内全域の薬局など29カ所で、15日まで実施する。

また、県は3月29日、政府が示す濃厚接触者の特定作業を必要ないとする基本的対処方針に対し、従来通り感染者の早期特定を続ける考えを示した。感染を早期に封じ込めるための対応で、濃厚接触者の自宅待機期間は原則7日間とし、医療や介護の従事者は、陰性が確認された場合のみ濃厚接触者であっても働くことを認める。
島根県感染症対策室の田原研司室長は「人の動きは社会活動を続ける上で不可欠。ただ、感染を抑えるため、県外との往来や、県外の人との会食を控えるなど、まずは感染リスクがある場をつくらないことを意識してほしい」と話した。
▼移動増加に危機感、対策徹底や無料検査で予防を
鳥取県はまん延防止等重点措置の3月21日の終了に合わせ、県境をまたぐ移動の自粛要請を終了した。ただ、島根県と同じく若年層の感染拡大が目立つため、年度初めに進学や就職で移動が増える若年層の動きに神経をとがらせる。
鳥取県は3月10日~4月10日を「新型コロナリバウンド防止特別月間」に指定。期間中、居酒屋などでの歓送迎会や花見で、コップの共用や多人数での密集を避けることに加え、進学や就職に伴う移動時に感染対策を徹底することを勧める。

無料検査は島根県と同様、無症状の人を対象に、県内の薬局や診療所の計63カ所で、4月10日まで実施する。やむをえない県外移動や会食で感染に不安を持った人に利用してもらい、早期の感染発見に努める。
濃厚接触者の特定作業については、鳥取県も島根県と同じく継続する。新たな対策として、感染者の追跡調査で感染拡大を早期に封じ込めるため、職員40人でつくる保健所応援チームを4月1日に立ち上げた。保健所職員が追跡調査に集中できるよう、保健所の業務を補助する。
平井伸治知事は3月29日の定例会見で、特に東部と中部で、経路不明の感染が増えつつあることを指摘し「感染源が既に市中に入り込んでしまっている可能性も考え、感染拡大を防ぐため、積極的な疫学調査で囲い込みを図ることが重要」と強調した。
鳥取県のコロナワクチンの3回目接種率は42・2%(3月28日時点)。鳥取県新型コロナウイルス感染症対策推進課の荒金美斗課長は「まん延防止等重点措置と違い、いずれも任意的なお願いだが、この時期の行動は慎重に判断してもらいたい」と気の緩みがないよう呼び掛けた。

桜が満開になり、晴れやかな気持ちになるが、警戒を緩めると、第6波のピークの状況に後戻りしかねない。感染拡大の可能性は常にあるという危機感を忘れないようにしたい。