コミットメントは約束などの意味だが、本来は守らなければ責任を取るという強いニュアンスが込められている。「できませんでした」と言い訳では済まない重い責任が伴う誓約や公約と訳した方がふさわしい。この言葉を使うには覚悟が要る▼デフレ脱却を目指して日銀が2013年、2年間で2%の物価上昇を実現するとのコミットメントを発表して、異次元の金融緩和を始めてから8年。国債を大量に購入して世の中にマネーをあふれさせ、物価を上げる目標はいまだに達成されず、先送りを繰り返してきた目標達成時期は宙に浮いている▼その間に超低金利が金融機関の収益を圧迫し、日銀による株の爆買いが市場の働きを歪(ゆが)めるなど副作用の方が目立ってきた。しかし国民生活にとっては目標が達成されていないことで随分助かっている。物価が上がらなくとも、おとがめなしの「緩いコミットメント」のおかげで出費が抑えられている▼生活者の立場からは無理に物価を上げる政策の意味は失われているが、日銀は物価目標の旗を降ろそうとしない。先ごろ、副作用を抑えながら超金融緩和政策をさらに継続していくことを決めた▼折からのコロナ禍で物価は下がり賃金も低迷。こういう時だからこそ、コロナ対策の政府借金を陰で支える日銀の金融緩和が生きてくる、との主張にも一理ある。それでもその後始末にもコミットメントが要る。(前)