チャンピオンに贈られるグリーンジャケットに袖を通すと、両手を高々と掲げた。日焼けした笑顔が頼もしかった。プロゴルフの最高の舞台、マスターズ・トーナメントで松山英樹選手が、日本人で初めて優勝。日本人男子として長年の悲願だった四大大会の初制覇を果たした▼米ツアー本格参戦から8年目の29歳。マスターズは、アマチュア時代から通算すると10回目の挑戦だった。ゴルフやテニスなどメジャーな個人競技では、「世界のトップスター選手」入りは難しいとされてきたが、「世界のHARUKI」村上春樹さんのノーベル文学賞よりも先に「世界のHIDEKI」になった▼世界に通用するHIDEKIと言えば、すぐに思い浮かぶのは、米大リーグでも活躍した松井秀喜さん。はるか昔なら、分野は違うがノーベル賞の湯川秀樹さん(物理学賞)がいる▼表彰式後のインタビューで松山選手は、日本の子どもたちに向けて「日本人でもできることが分かったと思う」と話し、メジャー大会を目指す子どもたちが増えることを期待していた▼そう言えば、同じHIDEKIつながりの故・西城秀樹さんも、ヒット曲『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』で<さあ立ち上がれよ><若いうちはやりたいこと何でもできるのさ>と励ます。とかく内向きとされる最近の若者だが、松山選手の快挙を刺激に、世界を舞台に夢を追ってほしい。(己)