新聞記事には常套句(じょうとうく)がある。その一つが「ガッツポーズをする」。歓喜の瞬間を表現するため、スポーツ記事で多用される。画一的になるので個人的には避けているが、先の選抜高校野球の記事でも目にした▼ガッツポーズの由来はガッツ石松さんだと思っていた。先月亡くなった田中邦衛さん主演のテレビドラマ『北の国から』にも出演し、役者やタレントのイメージが強いが、もともとはボクシング世界チャンピオン。8回TKOで王者を下した際、両手を高々と上げ勝利の喜びを表した姿を、新聞記者が「ガッツポーズ」と表現したことで世間に広まったとされる。47年前のきょうのことだ▼ところがよく調べてみると、その1年半前にボウリング雑誌『週刊ガッツボウル』が、ストライクを取った時のポーズを「ガッツポーズ」と名付けたのが始まりらしい。世界王者が知名度アップに一役買った▼そもそも「ガッツ石松」というリングネームは「ガッツ(根性)のあるボクサーになってほしい」という所属ジムの願いから名付けられた。もし違う名前だったら、ガッツポーズという常套句は生まれなかったかもしれない▼スポーツをするには絶好の季節になった。2カ月前にゴルフを始めた筆者も先日、コースデビューを果たした。スコアは散々だったが、青空の下で1回でもガッツポーズができれば、コロナ禍ですさんだ気持ちも少しは晴れる。(健)