この人のバイタリティーを見習えば、日本は勢いを取り戻せるかもしれない。NHK大河ドラマの今年の主人公・渋沢栄一だ。明治維新後、500以上の会社の設立や育成に関わり「日本の資本主義の父」と呼ばれる▼渋沢が一生懸命につくったのは会社だけではない。子どもの数も、非嫡出子を含めると20人近いともいわれる。渋沢に倣い「大金持ちの子だくさん」を目指す起業家が増えれば、経済が活性化するのはもちろん、少子化の流れも少しは緩和される▼そんな子どもの一人で、前回東京五輪の数年後に当時の第一銀行の頭取になった長谷川重三郎は1908年生まれ。計算してみると、渋沢が68歳の時の子どもになる。とても真似(まね)できそうにない▼『論語と算盤』に代表されるように、経済と道徳の両立を説いた渋沢だが、女性関係は別で、自ら「明眸(めいぼう)皓歯(こうし)に関することを除いては、俯仰(ふぎょう)天地に愧(は)じることなし」(美人に弱い以外は、やましいことはない)と広言したという。今なら週刊誌に狙われそうだが、当時は側室や愛人に関する社会通念の物差しが違っていたようだ▼渋沢のそんな一面が今回のドラマでは、どう描かれるのか。また渋沢は、2024年度前半には新1万円札になって登場する。そうなれば、「子だくさん」の御利益で1万円の子ども、つまり利子が増える金利上昇局面が来るのかどうか。興味はこの先も尽きない。(己)