今年も雲南市創作市民演劇の公演が迫ってきた。市民演劇は、旧木次町の有志が桜を題材にした舞台を上演したのが始まりで、2010年に第1回作品が披露された▼以降も雲南にまつわる作品を発表。出雲神話や三刀屋町出身で長崎の原爆で被爆しながら負傷者を救護した医師・永井隆博士といった多彩なテーマの作品が登場した▼今回は市内を走るJR木次線。脚本には沿線住民が寄せたエピソードが盛り込まれた。通学の際、学年によって乗車できる車両が違ったことや、高度成長期を担う若者が各駅から都市部へ出て行ったこと、木次線で出会った車掌と結婚したことなど、時代を映す物語が集まった▼だが、現状は厳しい。JR西日本は利用者が少ないローカル線の収支を公表。木次線も例外ではなく、費用に対する収入の割合(収支率)が出雲横田―備後落合間で1・5%。100円の収入を得るのに必要な費用を示す「営業係数」では、同区間が6596円と、公表路線の中で2番目に高い。「不採算」であることが数字で明確に示された格好だ▼演劇の題名「鉄人56号」はかつて木次線を走った蒸気機関車「C56」にちなむ。思い出が乗客となり、令和に生きる主人公に路線の在り方を問いかける。29、30両日にある公演会場は、木次駅から歩いて行けるチェリヴァホール。木次線に乗って来場し、主人公と一緒に、路線の未来を考えたい。(目)