ライブツアー「Editorial(エディトリアル)」松江公演当日の会場の様子=松江市学園南1丁目、松江市総合体育館
ライブツアー「Editorial(エディトリアル)」松江公演当日の会場の様子=松江市学園南1丁目、松江市総合体育館

 山陰発のバンド「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」が、全国ライブツアーのラスト公演を4月15,16、17の3日間、松江市総合体育館(松江市学園南1丁目)で開催した。この機会に、熱心なファンや地元で活動していた頃を知る音楽関係者にヒゲダンの魅力を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 ヒゲダンは2012年6月に結成し、今年10周年を迎えた。今回のライブは、2枚目のメジャーアルバム「Editorial(エディトリアル)」を引っ提げた全国ツアーのクライマックス。結成地の松江市では2年半ぶりのステージ。会場の松江市総合体育館は3日間で延べ1万2千人以上が足を運んだ。

山陰発バンド「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」のメンバー

▷「山陰を誇りに」
 今回のツアーで、広島、徳島、福岡、松江の計4公演に参加したというヒゲダンファンの女性(鳥取県在住)に話を聞いた。2018年、米子市内でヒゲダンのボーカル・藤原聡さんが出演していたイベントを訪れ、藤原さんが歌っていたヒゲダンの楽曲を聞き、ファンになったという。

 「曲は知っていたが、改めて生で聞くと歌詞やメロディーの良さに感動した。こんなすてきな歌詞を書く人がいるのかと衝撃を受けた」と、当時を振り返る。新生活を始める人の背中を押してくれる内容の「パラボラ」や、型にはまった人生ではなくて良いと、聞く人を励ます「Laughter(ラフター)」が特に好きという。

 今回のライブ後も、非日常的な雰囲気やヒゲダンならではの世界観を堪能し、ライブ後は数日の間、余韻に浸っていたという。

 「昔は田舎の出身であることを恥ずかしく感じていたが、ヒゲダンのおかげで誇りに思えるようになった」と女性。女性のように、ヒゲダンを好きになったことで地元・山陰に愛着が湧いた人や、山陰の魅力に気づいた人は多いのではないか。

松江公演当日の会場の様子

▷夢を描くきっかけ与えるライブ
 ヒゲダンがライブを重ねたライブハウス「アズティック・カノーバ」(松江市嫁島町)のスタッフで、現在はアイドルグループ「FloodLyrics(フラッドリリックス)」などのプロデュースも手掛ける三瓶大地さん(36)は、結成当初からメンバーを見守ってきた。

 結成当初と比べると演奏スキルが大きく向上し、大きなホールやアリーナでライブをするようになった姿に進化を感じながら、三瓶さんは「メンバーの人柄や、音楽を楽しむ姿勢は結成当初と変わらない」と、ほほ笑む。「立場は違うが、エンタメ(エンターテインメント)に携わる者として、彼らのように楽しい時間を作っていきたい。良い未来を作るため、松江のエンタメを盛り上げたい」と話した。

ヒゲダンがライブを重ねたライブハウス「アズティック・カノーバ」(松江市嫁島町)のスタッフ・三瓶大地さん(36)

 ライブ前後は「聖地巡礼」としてヒゲダンゆかりの地を訪れるファンも多く、カノーバにも100人以上が訪れた。新型コロナ感染対策のため、ライブハウスの外から写真を撮るなどにとどめてもらったが、ヒゲダンがライブを重ねた場所を一目見ようと、多くのファンが足を運んだという。三瓶さんは「彼ら(ヒゲダン)がいなかったら島根を訪れない人も多いと思う。ヒゲダンを通して、なんでもない場所が誰かにとっての特別な場所になっている」と話した。

 メジャーデビュー前から活動を見守ってきた地元の音楽関係者や熱心なファンの話を聞き、多くの人に感動を与え、誰もが楽しめるライブを作り上げるヒゲダンの魅力に触れることができた。山陰で活動し、音楽の力を身に付け、歌のバリエーションの多さはライブをより魅力的にしていた。ヒゲダンが作り出す世界に影響を受け、山陰から羽ばたく新たな「スター」が生まれてほしい。