66万9410と65万9098。近接する二つの数字は、順に島根県の140年前の1882(明治15)年の人口と、直近(4月1日現在)の推計人口だ。92万9066人(1955年国勢調査)をピークに、人口流出、少子化とともに90年代から年々減少。昨年ついに140年前を下回り、今春初めて66万人を切った。どこまで下がるのか。足元をつぶさに見ると、持続可能な地域づくりへ、希望の芽が育つ。

 2020年国勢調査で、人口17万2775人だった出雲市。15年の前回調査と比べ、0・5%の微増ながら、山陰両県12市では唯一の増加だった。外国籍の労働者の増加と、UIターンなどによる転入者の獲得が大きい。

 住民基本台帳に基づく、22年3月末の人口17万4226人で、うち外国人数は4805人。旧斐川町と合併後の12年(1828人)から、18年(4908人)まで増え続け、その後はほぼ横ばいが続く。

 22年3月末現在の外国人数のうち、74・1%をブラジル人が占める。斐川町時代の誘致企業、電子部品製造の出雲村田製作所(出雲市斐川町上直江)が、スマートフォンや電気自動車(EV)の普及に伴う需要拡大で雇用を増やしたことなどが背景にある。

 UIターン者はここ5年、毎年1千人前後で推移する。県推計人口によると、21年は松江市の1098人を上回る1187人だった。うち215人が「就職」を転入理由とし、安定的に雇用の受け皿があることを示した。

 「17万人台維持」を掲げる出雲市の人口が、減少を続ける松江市に代わり46年には県内トップになるとのデータがある。

 16年と5年後の21年の比較に基づく、島根県中山間地域研究センターの将来推計人口。「21年」と「46年」の対比で、出雲市は21年17万4822人、46年17万4538人とほぼ維持されるのに対し、松江市は21年19万9955人、46年16万7967人で、3万人余り減少するとしている。

 一方、自治体の総合戦略などで使われ、より精度が高いとされる国立社会保障・人口問題研究所の推計では、45年の人口が出雲市15万8261人に対し、松江市17万5485人で、県内トップの座は変わらない。

 推計値の誤差の大きさは、出雲市の人口維持の可能性とともに実現に向けた課題の大きさも表す。島根大教育学部の作野広和教授(人文地理学)は「製造業では働く外国人労働者の人数は外部経済の影響を受けやすく、実は持続可能ではない。この流れを冷静に捉え、地に足を着けた産業構造をつくるべきだ」と指摘する。

  (松本直也)