民主主義って、かなり面倒くさい。まずはいろんな人の意見を聞かなければ、物事は始まらない。その上で個々が最良とする判断を集約する▼皆が納得ずくの全会一致は理想だが、大概は多数決に頼る。厄介なことに、民主的に決まったのに、それが必ず正解というわけではない。例えば、悪名高い治安維持法は政党政治の産物。ドイツのナチスは非合法手段ではなく、選挙によって力を得た▼選挙制度でも民主主義の不完全さがよく分かる。民意を完璧に反映できるシステムがないのだ。小選挙区は死票が多く、少数意見を最も反映しにくい。比例代表に議席を配分するドント式も、無所属候補は対象外だ▼それでも、意見の異なる者同士がどうにか折り合いをつけて、落としどころを探るすべは、民主主義しかない。政治学者の宇野重規氏は社会の問題解決に参加することと、政治権力の責任を厳しく問い直すことを民主主義に不可欠の要素として、その在り方を問い続ける▼山陰両県では今月、首長や議員の選挙が続いている。たとえ定数を1人上回る選挙でも、誰が何票取ったかは非常に明確な民意だ。楽勝と思われた候補が意外と票が伸びなかったら、当選後も他の候補に票を投じた層を意識せざるを得なくなる。最も避けたいのは、投票してもしなくても結果は同じだとして棄権すること。票はいつでも、どんな選挙でも重い。民意を示そう。(示)