昭和の頃のイメージが残るせいか、今の60~70代は、ずいぶん若く見える。「じいさん、ばあさん」では失礼なくらいだ。平均寿命が延びて現役並みに働く人が増えたことや、生活環境が良くなったためだろうが、服装も影響していると思う。昔に比べると、おしゃれでカラフルになった▼『色の秘密』(野村順一著)によると、日本人が選びがちな、焦げ茶色や灰色、黒など渋い色の服は、内分泌系を活性化させる太陽光線を吸収してしまうため、早く老けるのだそうだ。若返りに最適とされるピンクは無理でも、色彩を楽しむことが幸福感にもつながるとか▼色には不思議な力がある。赤やオレンジなど暖色系に囲まれると、時間を実際よりも長く、青や青緑など寒色系では逆に短く感じる。体感温度も、部屋を暖色系にするか、寒色系にするかで3度くらい違うようだ▼しかも私たちは目だけでなく皮膚でも色を感じていて、当たる光の色によって筋肉の緊張度が変わるらしい。これを「ライト・トーナス値」と呼び、一番リラックス(弛緩)する色は、肌の色に近いベージュ。赤に近づくほど緊張度は増す。和室が落ち着くのは木の柱や天井、畳や壁などベージュ系が多いからだという▼これまで無頓着だった暮らしの中の色使い。色の効能を知ったことで、カーテンの色や、食卓に置く一輪の花にこだわる家人の姿が少しだけ分かった気がする。(己)