中国では記念日を日付で表すことが多い。1949年10月1日の中華人民共和国の建国記念日は、国慶節とともに「十一」と表す。11月11日は11が二つで「双十一」。1が四つ並ぶことから独身の日とされており、「爆買いで独り身の寂しさを紛らわす」という意味でネットショッピングの日にもなっている▼これらを中国系サイトで検索すると関連の話題が多く出てくるが、「六四」は極端に少ない。大手検索サイトの「百度(バイドゥ)」では過去の記事が出るものの、共産党機関紙の人民日報や国営新華社通信のサイトは「関連情報なし」▼89年6月4日、北京の天安門広場で民主主義を求めてデモ行動した学生に人民解放軍が発砲し、多くの犠牲者を出す天安門事件が起きた。きょうで33年を迎える▼一国二制度の下で言論の自由が認められ、「六四を忘れない」と訴えてきた香港では、政府の統制で事件の記念館が閉鎖に追い込まれた。中国のネット社会では体制に批判的な言葉が徹底的に排除される。やがて中国国内では「そんなことがありましたか?」というふうになるだろう。歴史が〝創られる〟ことを肌で感じる▼デモを武力制圧した指導者たちは、経済を発展させつつ、共産党の指導体制は堅持する姿勢を「特色ある社会主義国家」と定義し、現在も引き継ぐ。だが、その切り札が言論の監視だとすると、いつか限界が来ると懸念する。(万)