キャンプ場内にある箱形のサウナ。支配人の熊野正起さん(写真)が設計、設置した。=島根県飯南町小田、キャンプもりのす
キャンプ場内にある箱形のサウナ。支配人の熊野正起さん(写真)が設計、設置した。=島根県飯南町小田、キャンプもりのす

 森の中のキャンプ場で、サウナに入り、熱くなった体を清流で冷やす「川サウナ」が登場した。島根県飯南町に向かい、自然の中で新感覚のサウナを体験した。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷アウトドア用に設計したサウナ
 川サウナは島根県飯南町小田にある「県民の森」の中のキャンプ場「もりのす」に設置された。キャンプ場の支配人の熊野正起さん(40)は、松江市で飲食店を経営するが、大のサウナ好き。キャンプ場のすぐ横に流れる小田川など自然豊かな土地を目にし「生かさない手はない」と、アウトドア用のサウナを設計した。キャンプ場内に箱形の「キュービックサウナ」とテント型のサウナの2種類を用意し、自然の中で楽しむサウナを実現させた。

キャンプ場「もりのす」支配人の熊野正起さん(40)

 もりのすサウナの特徴はなんと言っても、アウトドア要素と一緒にサウナを楽しめること。サウナで汗を流したら、すぐ近くを流れる小田川で「自然の水風呂」につかることができる。水風呂の後、椅子などでくつろぐ「外気浴」は森林の緑や川のせせらぎを肌で感じる。一般的なサウナと違い、アウトドア感満点だ。

写真中央の黒い箱形の建物が「キュービックサウナ」。右はキャンプ場の事務所。
サウナや水風呂の後に体を休めるスペース。自然に囲まれながら「ととのう」体験ができる。

▷いざ、体験!
 実際に川サウナを体験してみよう。キャンプ場内にある更衣室でレンタル用のショートパンツとシャツに着替えて、いざサウナへ。
 入った瞬間、ふわりと心地よい温かさに包まれ、体がほぐれる感じがした。部屋の隅に置かれたまきストーブはサウナの本場・フィンランド製。「パチ、パチ」とまきが燃える優しい音を発し、ストーブの上に置かれた島根県産の石を暖めている。

 キュービックサウナは広さ約4平方メートル、高さ2.5メートル。座る場所は上段と下段に分かれ、それぞれ3人ずつ、計6人まで入ることができる。

キュービックサウナの内装。座席は上下2段に分かれ、それぞれ3人ずつ座ることができる。

 下段の席に座り、体を温める。サウナは温度が高すぎたり室内が乾燥したりしていると、ひりひりと肌が痛く呼吸が苦しい場合があるが、まきストーブのやわらかい温かさで温められた室内は肌のひりひりも、苦しさも感じない。ストーブの上で温められている石に水をかけると、蒸気がふわっと立ち上り室内に循環するのを感じた。蒸気に包まれる優しい温かさが心地よい。

サウナに使用しているまきストーブは、サウナの本場・フィンランド製。

 ふと正面を見ると、辺り一面に自然豊かな光景が広がっている。正面は耐熱性のミラーガラスになっていて、近くを流れる小田川や木々の緑を眺めながらサウナを楽しめる。サウナは6人が入れるが、正面の全面がガラスになっていることで、外の景色を眺めることができ、狭さを感じない。当日はあいにくの雨だったが、美しい渓谷や木々の緑は十分に見える。優しいぬくもりで体を温めながら、周囲に広がる自然をのんびり眺める。サウナに入りながら森のキャンプ場の自然と一体感を味わうことができる。なんとぜいたくな過ごし方だろう。「自然を活用しない手はない」という熊野さんの言葉に心から納得した。

キャンプ場のすぐ横を流れている小田川。サウナ語は川につかり「自然の水風呂」を堪能できる。

 サウナで温まった後は、水風呂代わりに川に入り体を冷やす。入る前は「冷たそう…」と不安に思っていたが、入ってみると思いのほか気持ちいい。水風呂というとキンキンに冷えていて身構えてしまうイメージがあった。川の水は刺すような冷たさではなく、肌に優しい感じで、じんわりと体を冷やしてくれる穏やかさを感じた。

 川に入った後は、アウトドア用の椅子に寝転んで休憩する。サウナでほてった体を川の水で冷やし、川のせせらぎを聞きながらゆったりと椅子で休んでいると、ふわふわと不思議な感覚になる。大自然の中で「ととのう」を体験し、明日からも頑張ろうと活力がわいた。 

サウナと水風呂の後は外に設置された椅子に座って休憩する。川のせせらぎや木々の緑といった豊かな自然を存分に味わうことができる。

▷キュービックサウナとテントサウナ
 キュービックサウナ、テントサウナともに、まきストーブで室内を温めるのが特徴。まきストーブは電気ストーブと比べて穏やかな温かさが特徴で、じんわりと体を温められる。ストーブの上で熱している石に水をかけ、ハーブの香りの蒸気を室内に行き渡らせる「ロウリュ」も楽しめる。テントサウナはキャンプ利用者に向けて貸し出していて、1組につき1個利用できる。

キャンプ利用客に貸し出しているテント型のサウナ。

 キュービックサウナはキャンプ利用者以外も使用できる。外装はミラーガラスのほか黒を基調とした落ち着いた色の壁で、自然豊かな風景に溶け込むデザインになっている。外から見ると、ただの箱ではなく、ミラーに森の緑が映り、景色の一部になるという不思議な感じだ。キャンプ場に設置されていても違和感はなく、おしゃれな感じがする。

キュービックサウナの側面に付いているミラーガラスは、周囲の風景を鏡のように映す。自然の中に違和感なく溶け込むデザインだ。

▷愛好家にも評判
 大自然とともに楽しめる本格的なサウナは人気を集めていて、松江市、出雲市、広島県など県内外から多くの愛好家が訪れている。客からは「まきストーブ式でこのサイズ感のサウナはなかなかない」「ソフトな温かみが心地よい」など喜びの声が届くという。

 熊野さんは川サウナについて「川も山もあり、お金では買えないすてきなロケーション」と話した。今後は自然を生かした遊具の設置など、飯南町の豊かな環境をさらに生かした取り組みをしたいという。サウナは企画、設計から手掛け、まきストーブの輸入代理店にもなった。まきは、地元の森林組合と提携し、供給を受ける。今後は全国のキャンプ場や海水浴場など地域の活性化を目指す場所に売り込んでいくという。既に、注文も来ているという。今ある物を最大限に活用し楽しむ生活の楽しさ、自然豊かな風景が残る地方の新たな可能性を感じた。

夜はライトアップやたき火で幻想的な雰囲気を楽しめる。

 サウナは正午から午後8時まで利用できる。利用可能時間は予約状況により変わることがある。サウナのみの利用は4000円。キャンプ利用者は3000円、近くにある「ホテルもりのす」宿泊者は2000円で利用できる。当面の間はキャンペーンを実施していて、一律2000円で利用できる。キャンプサイトは23区画あり、1泊4000円。キャンプやサウナの予約は電話080(7274)8791で受け付ける。