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貝塚は古代人が捨てた貝殻が積もった遺跡である。いわば古代のごみ捨て場。松江市鹿島町にある佐太講武貝塚は約6千年前の縄文時代にさかのぼる。鹿島中学校前を流れる佐陀川の辺り。昭和初めに史跡になった。日本海側で有数の規模だ▼現地は看板のみだが、近くの鹿島歴史民俗資料館に、厚さ約1メートルの層の断面を長さ8メートルにわたるパネルにした発掘資料がある。びっしりの貝殻はシジミ。他に動物や魚の骨も。タヌキ、イノシシ、コイ、フナ…と、なじみのあるものばかりで、「大昔にもごみ捨て場があったんだな」という感慨とともに太古の人々に親近感が湧く▼縄文人が知れば、自分たちのごみが6千年後に文化財になっているとは、と驚くに違いない。同じ鹿島町内にもある原子力発電所から出るごみは、未来の人々にどう思われるのだろう▼原発ごみのうち、高レベルの放射性廃棄物(核のごみ)は地下300メートルよりも深い岩盤に埋め、放射線量が十分に下がるまで数万年以上、人間の生活環境から遠ざける考え。地層処分という。いずれ処分場所を決めることになる。6千年をはるかに超え、人類が生き永らえているかも分からない未来までを想定するごみ捨て場である▼地元の鹿島中生は夏休みの研究に、身近な貝塚と絡めて核のごみについて考えてみるといいかもしれない。現世代の一人一人が真剣に向き合うべき重い問題である。(輔)