中学、高校の運動部に所属する3年生にとって「最後の夏」が終わった。有終の美を飾った生徒もいれば悔し涙とともに引退した生徒もいただろう。文化部はこれから秋の本番を迎える▼彼たち彼女たちは入学当初から新型コロナウイルス禍に翻弄(ほんろう)されてきた。一斉休校が明けても、部活動は多くの制約を受け、節目の大会も次々に中止に追い込まれた。それでもひた向きに練習に励んできた努力をたたえたい▼今夏、甲子園を制した仙台育英高校の須江航監督の優勝インタビューが話題となった。「青春ってすごく密なので。でもそういうことは全部ダメだ、ダメだと言われて。苦しい中で、本当によくやってくれた」と語り、多く人の共感を呼んだ▼以前、各地の学校だよりで「我慢と辛抱の違い」が相次いで紹介されたことがあった。嫌なことをただ耐え忍ぶのが「我慢」、好きなことのために耐え忍ぶのが「辛抱」で、我慢には不満が、辛抱には希望が含まれるそうだ。そして、いずれ限界が訪れる我慢ではなく、辛抱をしようと続く▼島根県は先ごろ、部活動の一斉停止を求める一方、飲食店の利用制限を緩和した。感染対策と経済活動の両立が目的だが、なぜ部活動だけがやり玉に挙がるのか。子どもたちは酒宴へ繰り出す大人の姿を見て不満を抱かずにいられるだろうか。辛抱の時だと言い聞かせようにも、説明があまりにも不足している。(文)













