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目の覚めるような鮮やかな白と赤の配色。車両側面に映える「かもめ」の文字はJR九州の青柳俊彦会長による揮毫(きごう)という▼西九州新幹線が開業した。武雄温泉(佐賀県武雄市)と長崎(長崎市)を結ぶ全長約66キロは、国内の新幹線では最短。武雄温泉で在来特急に乗り換える必要があるものの、長崎-博多(福岡市)間は最速1時間20分となり、従来より約30分短縮される。初めて新幹線が走る長崎県は、交流人口拡大の起爆剤として「かもめ」に期待する▼長崎が抜けたことで新幹線が通らない「空白地」は、山陰両県や四国4県を含め15県になった。このうち福井は1年半後に北陸新幹線が開業予定▼ますます肩身が狭くなりそうな山陰両県にも新幹線計画が今も存在する。大阪から両県を経由し山口県下関市を結ぶ「山陰新幹線」と、JR伯備線をルートにする「中国横断新幹線」(岡山-松江)。共に建設を開始すべき路線として、1973年に国の基本計画に盛り込まれたものの、その後の経済情勢の悪化で凍結されたまま。ただし、消滅したわけではない▼思えば前回の64年東京五輪開幕に合わせた東海道新幹線開業を機に、東京をはじめ沿線が繁栄する半面、山陰両県の人口は減少の一途をたどった。新幹線は格差の象徴ともいえる。国土の均衡ある発展や災害時の代替ルートの視点で捉えるなら、山陰の高速鉄道も決して夢物語ではないはずだ。(健)