山陰へのU・Iターンのきっかけとして定着した地域おこし協力隊。2009年の運用開始から13年余りを経て、制度は新たな段階に入ろうとしている▼総務省によると20年度末時点で任期が終了した隊員数は島根県が415人。このうち活動地や近隣自治体へ定住したのは242人で、定住率は58・3%だった。鳥取県は終了者165人に対して定住者108人で、定住率は65・5%▼島根は定住率こそ全国平均の65・3%に比べて劣るものの、終了者と定住者の実人数は北海道、長野県に次いで全国3番目。先進県と言っていい。活動した自治体の枠を超えてOB・OGでネットワークをつくり、後から続く協力隊員の相談に乗ったり、情報を交換したりする仕組みが貢献している▼ぜひOB・OGの皆さんには、外から見た島根、鳥取の魅力、あるいは暮らしづらいと思ったことも含め、経験を後輩の協力隊員だけでなく、地域の子どもたちにも話してほしい。出雲市多伎町で16年10月から3年間、隊員として特産のイチジク栽培や水田で金魚飼育をしながら多伎の振興に関わり、終了後に定住した山田真嗣さん(39)も先日、初めて地元の小学校でイチジクの話をした▼定住は教育にかかっている部分が大きい。たき火に例えると、協力隊制度の定着によって小枝には火が付いた。枕木を燃やして火を安定させるため、学校現場での活躍を切に願う。(万)










