衆院本会議の代表質問で答弁する岸田文雄首相。上は細田博之議長=5日午後
衆院本会議の代表質問で答弁する岸田文雄首相。上は細田博之議長=5日午後

 カメレオンは周囲に合わせて、巧みに体の色を変える。風景が変わればそこに溶け込み、天敵から身を守る。「しかし、彼らは自分の意志で色を変えているわけではない。政治も同じだ。時として周囲の状況で色を変えねばならない」。1990年代に人気だった漫画『MASTERキートン』で老練な政治家がつぶやくせりふだ▼発足から1年を迎えた岸田政権はカメレオンのように色を変えながら、場当たり的に問題をやり過ごそうとしている印象だ。象徴的なのが旧統一教会問題▼関係が深いとされる自民党最大派閥の清和会(安倍派)への配慮からか当初は正面から向き合わず、世論に押されて調査を始めた。内閣改造で教団側との関係が判明した議員を外して火消しに走ったが、その後も次々と接点が発覚。賛否が割れた国葬の問題と合わせ、臨時国会の代表質問でも防戦を強いられている▼「新しい資本主義」を掲げて政権が出発した際、アベノミクスの恩恵が行き届かない地方や中小企業、個人への再分配が進むという期待感があった。今は国をどこに導きたいのか「岸田色」が見えない。失望感は支持率の急落が物語る▼10月に入って、食品や日用品が一斉に値上げされた。物価高、コロナ禍で先が見えず、国民の怒りは高まる。カメレオンは怒りの感情でも体の色を変えるという。国民の怒りを反すうし、首相は原点に立ち返ってほしい。(直)