試合終了後、家のプレゼントの記念ボードを手にするヤクルト・村上宗隆内野手=3日、神宮球場
試合終了後、家のプレゼントの記念ボードを手にするヤクルト・村上宗隆内野手=3日、神宮球場

 記録にも、記憶にも残る一発は、高い弾道を描いて神宮球場のライトスタンドに飛び込んだ。「村神様」こと、ヤクルトの村上宗隆内野手が一昨日のDeNA戦で56号本塁打を放ち、1964年の王貞治さん(巨人)の55本を抜いて日本選手のシーズン最多記録を更新した▼重圧もあっただろう。55号から14試合も足踏み。レギュラーシーズン今季最終戦の最終打席で待望の一発を放ち、史上最年少の22歳で三冠王の栄誉にも輝いた▼一夜明け、朝のニュース番組で歓喜の余韻に浸っていると、冷や水を浴びせるような黒い画面に切り替わった。「国民保護に関する情報」-。「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又(また)は地下に避難して下さい」▼北朝鮮が発射したのは弾道ミサイル1発。青森県付近の上空を通過し、日本列島の東約3200キロの排他的経済水域(EEZ)外の太平洋に落下したとみられる。推定飛行距離は約4600キロで北朝鮮ミサイルとしては過去最長。こちらの記録更新はうれしくない▼国民を危機に陥れる「度を越した行為」(防衛省幹部)は言語道断。とはいえ、それを理由に防衛費増額へかじを切っても、値上げラッシュにあえぐ国民の理解は得られまい。冒頭の村神様にはスポンサーから3億円の家がプレゼントされるらしいが、気前がいいのは歓喜のときだけでいい。(健)