勝負師として結果を出すことはできなかったが、選手起用を巡る多くのドラマを見せてもらった▼プロ野球広島東洋カープの佐々岡真司監督(浜田市金城町出身)が3年で退任した。5月17日に宇都宮市であった巨人戦。8回まで2-0と零封していた愛(まな)弟子で、隣県・茨城出身の遠藤淳志投手に対して、九回表1死満塁の好機で代打を出さずに裏での続投を選択。救援陣を含めて打たれ、サヨナラ負けを喫した▼あと一歩の難しさ、それを乗り切ることで、どれだけ成長できるか。現役時代に味方がリードしていた最終回、あるいは広島市民球場での引退試合など、節目でたびたび被弾をした佐々岡監督だからこその采配。「チームの勝ちが最優先なのに…」との批判も評論家の間ではあったが、報道で知る限りでは、本人は「迷いはなかった」と一切、言い訳をしなかった▼その人柄が根底にあったからこそ、森下暢仁(まさと)、栗林良吏(りょうじ)両投手のドラフト単独指名、2年続けての新人王輩出という快挙につながった。監督の資質である「逸材との出会い」には恵まれた▼球団19代目で初めての山陰出身の監督でもあった。おとといの最終戦で先発マウンドに指名したのは鳥取市出身の森翔平投手。5回ながら無失点で投げ切った。3年間、コロナ禍でチームや監督をなかなかマツダスタジアムで応援できなった山陰のファンにとって、胸のすく一幕だった。(万)