アインシュタイン
アインシュタイン
小泉八雲
小泉八雲
アインシュタイン
小泉八雲

 ノーベル賞のうち医学生理学、物理学、化学の自然科学系3賞がきょうから発表される。日本人が受賞するかどうか注目されるのが恒例だが、ノーベル賞といえばアインシュタイン(1879~1955年)を思い浮かべる人も多いだろう。100年前の1922年に物理学賞を受けた▼20世紀が生んだこの偉大な科学者が受賞した業績は有名な相対性理論ではなく、光(こう)量(りょう)子(し)仮説だったことは案外知られていないかもしれない。光は「波」でもあり「粒子」でもあるという説。切れ目のない波か、つぶつぶの粒子かで長く続いた論争を決着させた▼受賞が発表された時、本人は日本に向かう船の中にいたことはもっと知られていないかもしれない。出版社の改造社から招待を受け、22年10月8日にフランスを出発し11月9日に受賞、17日に神戸に到着して大歓待を受けた▼一般相対性理論の正しさが19年に証明され、既に世界的な物理学者だった彼がはるばる招きに応じた背景に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、1850~1904年)の存在があった。八雲の著作を通じ日本に興味を抱いていたという▼「怪談」を著した八雲と、対極にいるような理論物理学の天才に接点があるのは興味深いが、光は波だったり粒子だったりという結論はほとんど怪談のようでもある。万物を解き明かそうという試みの中で、何が今年のノーベル賞を受けるのだろう。(輔)