旧浜田高校今市分校の木造校舎=浜田市旭町丸原(8月31日撮影)
旧浜田高校今市分校の木造校舎=浜田市旭町丸原(8月31日撮影)

 1カ月前、旧浜田高校今市分校(浜田市旭町丸原)の木造校舎を解体するという記事を読み、20年ほど前に取材エリアだった学校や旧旭町のことを懐かしく思い出した▼1999年に同校を主会場に開かれた「第3回全国分校サミット」は、今で言うところの地域一体で学校を盛り上げる「高校魅力化プロジェクト」を先取りした取り組みだった。分校という置かれた環境を嘆く前に、地域を愛して行動を起こす-。全国から集まった43校の生徒は、石見神楽の継承を通じた地域住民との協働など、分校だからこその学びの実践例を報告し合った▼当時の旭町は明るいニュースばかりではなかった。現在は閉じられた旭テングストンスキー場は当時から厳しい運営状況だったし、浜田道開通を機に島根県が整備した旭拠点工業団地の誘致は思わしくはなかった。しかし、取材で接した当時の役場職員や地域の人たちは「なんか、しちゃろうや」と明るかった▼分校サミットがあった年には、当時スポーツ競技として認知され始めた雪合戦大会がスキー場で開かれた。空いた工業団地には、山口県美祢市に次ぎ全国2番目の民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」の誘致に成功した▼一言で表すなら「いぶし銀」のような地域、という印象を持つ。地域の象徴だった校舎はなくなるが、「分校魂」は不滅だ。(万)