「際」という漢字を広辞苑で引くと(1)であうこと(2)きわ(3)ほとり(4)とき-の四つの意味が出てくる。熟語にすれば「際会」「際限」「水際」「実際」といった具合▼「際」の字を名前に持つこの人には、これらの熟語が全て当てはまりそうだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点が相次いで発覚し、経済再生担当相を更迭された山際大志郎氏のことである▼教団トップの韓鶴子(ハンハクチャ)総裁と面会しているのに際限なくほおかむりを決め込み、「実際どうなのか」と3年前に撮影された証拠写真を突き付けられ、水際に立たされた。最大の危機に際会しても「(面会の記憶は)ちょっとおぼつかない」。大の大人、しかも国会議員とは思えない往生際の悪さ。身内の自民党内からも、山際ならぬ「瀬戸際大臣」と突き放す声が出たのも当然だろう▼山際氏の引き際を見誤ったのは任命権者である岸田文雄首相だ。8月の内閣改造で教団側との接点が判明した閣僚を交代させたものの、改造当日に接点を認めた山際氏は留任させた。首相が掲げる「新しい資本主義」や新型コロナウイルス対策の重責を担う大臣を代えたくなかったのだろうが、結果的にその判断が、自らの首を絞める結果になった▼瀬戸際大臣の首を切っても教団と自民党議員の不適切な関係が清算されるわけではない。これで幕引きのつもりなら、首相自身も瀬戸際に立たされることになる。(健)