ツキノワグマへの注意を呼びかける張り紙(写真右)。観光施設によっては鈴を貸し出すところもある=雲南市掛合町入間、八重滝
ツキノワグマへの注意を呼びかける張り紙(写真右)。観光施設によっては鈴を貸し出すところもある=雲南市掛合町入間、八重滝

 冬眠前のツキノワグマが活発に動き回る時期を迎えた。山陰両県の目撃・出没件数は本年度、山間部に餌が豊富にあるおかげか、直近5年で最少(9月末時点)。今秋は遭遇する心配が少ない方とみられるが、島根県西部で人が襲われる被害も発生しており、関係自治体は警戒を強める。

 いずれも浜田市弥栄町内の山あいで、10月上旬に住民がクマに引っかかれてけがをしたほか、下旬には民家に侵入した。島根県は、民家の庭先に捕獲用のおりを設置。浜田市は防災無線やメールで市民に注意を呼び掛けた。

 島根の9月末時点のツキノワグマ目撃件数は、2021年度比30件減の452件。鳥取はクマが出没した痕跡も含め5件減の79件。直近10年の最多は島根が20年度の1362件で、21年度は4割減の775件。鳥取は16年度の495件が最多で、18~20年度にやや高止まりし、21年度は前年度から3割減った。

 件数の増減は山間部の餌の多少に左右される。クマが好むコナラやミズナラといった堅果類の22年度の生育状況は、島根はコナラが平年並み、ミズナラが豊作。鳥取はコナラが平年並み以上、ミズナラが豊作となっている。不足する餌を求めてクマが人里に下りる可能性は低くなり、目撃件数が減少する傾向にある。

 ただ、油断は禁物だ。島根では16年度の目撃件数が9、10月で計283件だったのが、11月に254件に達するなど深まる秋とともに急増したケースもある。

 島根の目撃件数は毎年、8割を県西部が占める。人がクマに襲われる被害は直近5年で8件あり、いずれも浜田、益田両市、津和野町と西部で発生した。県鳥獣対策室の右田龍司室長は「西部はもちろん、東部も近隣の山中にいると思って注意してほしい」と促す。

 11月は紅葉狩りで行楽客が山間部に足を運ぶ機会が増える。鳥取県緑豊かな自然課の平木尚一郎課長はクマが活発に動く時期に重なると指摘し「山間部にはできるだけ1人で行かず、鈴やラジオで人の存在を知らせることが重要」と語った。
  (清山遼太)