新型コロナウイルス対策の地方創生臨時交付金が制作費に使われた、巨大なスルメイカのモニュメント=2021年5月、石川県能登町
新型コロナウイルス対策の地方創生臨時交付金が制作費に使われた、巨大なスルメイカのモニュメント=2021年5月、石川県能登町

 新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な影響を受けた地域経済や住民の暮らしを支援することを目的として、国は全国の自治体に「地方創生臨時交付金」を配った。2020~21年度で計15兆円余りの予算を計上。コロナ対策であれば使途は自由にしたが、自治体には交付金事業の効果を検証し、ホームページなどで公表するよう求めた。

 会計検査院は21年度決算検査報告で不適切な支出などを指摘する一方で、臨時交付金を配布された1788自治体のうち989自治体について効果検証の状況を調査。その結果、3月末時点で8割近くが未公表で、5割以上は検証自体しておらず、国に対し検証作業の周知徹底を要求した。

 コロナ交付金による事業として、消毒液とマスクの確保や困窮家庭への給付金支給、事業継続支援の助成金などは分かりやすい。しかし婚活支援や花火大会、ライトアップと、いくら使途に制限がないといっても、本当に必要か、交付金の目的にかなっているか―と首をかしげたくなるようなものも多々あり、厳しい視線が注がれている。

 巨大イカのモニュメントを作るのに交付金2500万円をつぎ込んだ自治体もあった。コロナ禍という緊急事態に対応するための交付金で賄うのがふさわしいかどうか、国と自治体は事業ごとに内容や効果をしっかり検証し、国民に説明を尽くしていく必要がある。

 検査院が今回調査したのは、24都道府県と965市区町村の20年度実施計画に基づく計4万5469事業。交付金の総額は3兆4058億円に上った。このうち4都府県と197市区町は効果検証をしたが、結果を公表せず、17道県と541市区町村はそもそも検証を実施していなかった。

 こうした未公表分は交付額にして2兆6977億円。コロナ対応に効果的で必要な事業だったかどうか説明責任を果たしていないとしている。

 交付金は20年度に創設された。内閣府は「コロナ対応に効果的な対策で、地域の実情に合わせて必要な事業であれば原則として使途に制限はない」と説明。自治体がありとあらゆる事業に費やす中、国会で婚活支援や花火大会に充てた事例が取り上げられ、野党は「使い方は厳しく見るべきだ」と批判した。

 石川県能登町は2740万円をかけて、地元特産のスルメイカをモチーフにした全長約13メートルのモニュメントを設置。制作費のうち2500万円を交付金で賄った。「感染対策に使うべき交付金でなぜ作るのか」などと電話が相次ぎ、海外メディアも「無駄遣いと批判されている」と報じた。

 町は効果検証の結果を公表。その中で「コロナ下で業績が悪化した地元産業を救うべく、設置した」とし「産業の活性化、地元雇用の確保などに寄与」と述べている。とはいえ、コロナ対応の交付金を使うことに多くの人の理解を得られるかというと、疑問が残る。

 ただ婚活支援なども含め問題視された交付金事業でも地域振興や業界支援といった面もあり、一概に「不適切」「目的外」と言い切れないところがある。だからこそ、自治体による効果検証が重要になってくる。

 感染再拡大も懸念されており、その時に備え国はこれまで配った交付金を巡り自治体の検証を精査し、問題支出を減らす方策を検討すべきだ。