全国の小中学校で不登校の児童生徒が2021年度は過去最多の24万4940人に上ったことが文部科学省の調査で分かった。約半数が90日以上欠席しているという。
前年度から一気に24・9%もの大幅増となった。増加は9年連続で、20万人を超えたのは初めて。この10年間で倍になり、小学生は4倍近いという深刻さだ。
さまざまな要因が考えられるが、これほど急増したのは新型コロナウイルスの影響とみて間違いないだろう。
感染拡大によって日常が一変し、子どもたちが抱えるストレスもより大きくなったはずである。関係機関が連携し、一人一人に必要な支援体制の充実を急いでもらいたい。
文科省の定義では、不登校は病気や経済的理由などを除き、対人関係のトラブルや漠然とした不安などで年間30日以上欠席した場合に該当。調査結果によると、小学生は8万1498人、中学生は16万3442人だった。中学生は「40人学級」に当てはめると1クラス2人に上る。学校が判断した不登校理由は「無気力、不安」が最も多く、49・7%を占めた。
同省は、新型コロナによる環境の変化で生活リズムが崩れやすくなったことや、運動会や遠足といった多くの学校活動が制限され登校意欲が湧きにくくなったことなどが背景にあるとみている。義務教育に特有の原因があるかどうかも含め、データをさらに詳細に分析し、効果のある手だてを講じてほしい。
関連する事情として小中学校の教員が多忙すぎる点は見過ごせない。現場からは「子どもと接点を持ち、話を聞き続ける以外に不登校への特効薬はないが、その余裕が失われている」との訴えが出ている。
つらさを一人で抱え込んでいる子どもと向き合う時間を教師がとれなければ、SOSのサインを見逃しかねない。すれ違いをきっかけに「先生の言動は素っ気ない」と受け止められてしまえば、相談したいと思い悩む心を傷つける場合もあるだろう。教員の増員など国による学校現場への援助が重要だ。
一方で、子どもを学校に通わせなければならないという考えに大人がとらわれ過ぎて、登校を無理強いすることのないよう心がけたい。17年施行の教育機会確保法は、不登校の児童生徒には休養が必要として、それぞれの状況に応じた国や自治体による助けを求めている。個々人の意思を尊重し、学校の外にも多様な学びの場を設けたい。
この点で現状には懸念がある。学校側が把握する限り、フリースクールや教育支援センターなど学校内外の施設や機関で相談・指導を受けた不登校の児童生徒は63・7%にとどまる。36・3%に当たる約8万9千人の多くが、何らサポートを受けない状態に置かれている恐れがある。孤立していないか心配だ。
「安心できる環境が得られれば、子どもは自ら意欲を持って動き始める」。長年にわたり支援に取り組む当事者の声だ。不登校を社会全体の問題として捉え、児童生徒が気兼ねなく日常生活を送れる居場所づくりを進める必要があろう。そのために不可欠なのは、「学校に行けなくても大丈夫」という肯定感を子ども自身が持てるよう見守る、周囲の大人たちの温かいまなざしであることを忘れてはなるまい。