米中間選挙で、開票状況を見守る民主党候補の支持者ら=8日、ノースカロライナ州(ロイター=共同)
米中間選挙で、開票状況を見守る民主党候補の支持者ら=8日、ノースカロライナ州(ロイター=共同)

 米中間選挙は投票翌日の9日も開票作業が続き、連邦議会上院、下院ともに丸一日以上たっても大勢が判明しない大接戦になった。一部で予想された共和党の圧勝は起きなかった。2024年大統領選に向けて米政界は政争の季節に入り、民主党のバイデン大統領は政策遂行が難しくなる。

 民主主義陣営の旗手である米国は今後、内政の混乱で対外指導力を発揮できなくなる懸念がある。日本は米国の揺らぎに万全の備えをするべきだ。

 政権1期目の中間選挙では、大統領の政党は大幅に議席を失うことが通例となっており、その逆風の中で、民主党は過去の中間選挙に比べて上院で接戦に持ち込むなど善戦したとも言える。

 だがバイデン民主党政権は約40年ぶりとなる8%超のインフレに対して目に見える効果的な対策を取れず、国民の期待に応えられなかった。インフレは世界的なコロナ禍、ウクライナ戦争など米国だけでは沈静化できない性格だが、総じてバイデン氏の熱意が感じられなかった。

 世論調査では、犯罪の多発や不法移民対策の不備を重要争点とする声も強く、国民生活に直結する問題での政策の不足を指摘した共和党に国民の一定の支持が集まった。

 民主党は人工妊娠中絶をめぐる女性の権利、21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に象徴される民主主義の危機を掲げて、トランプ前大統領派や教条的な保守派が力を持つ共和党への対抗を呼びかけた。人工妊娠中絶問題への女性の危機感は強く、民主党候補への支持が増した。

 本来インフレや犯罪、移民、女性の権利など政権の政策遂行への審判とすべき選挙なのだが、トランプ氏の過激な政治手法も争点となった。

 トランプ氏は来週にも24年大統領選に出馬する意向を示唆していた。さまざまなメディアを使った中傷攻撃を得意とし、暴力的な行動を辞さないグループも支持者に抱える。中間選挙ではトランプ氏の推薦を受けた候補や20年大統領選でのバイデン大統領の当選を認めないとする候補も多数出馬した。

 しかし、そうした乱暴な手法への反発は、民主党支持層だけでなく無党派層にも広がり、政権の政策を批判する正攻法の選挙戦に臨んだ共和党候補の足を引っ張った。10月末にはトランプ氏の支持者とみられる男が民主党のペロシ下院議長の自宅を襲撃し衝撃を与えた。

 今後の米議会は、開票速報でやや先行する共和党が下院で多数派を握ればバイデン政権高官に対する弾劾訴追を進める意向ともされ激しい政争が始まる。同党は政府債務の上限を引き上げる合意を人質にとり、バイデン政権の脱炭素や社会保障政策の遂行を阻止する狙いだ。石油などエネルギーの国内生産増強の圧力もかける。

 外交ではウクライナ支援について、共和党のマッカーシー院内総務は使い放題の小切手は渡さないと述べ、支援見直しの可能性がある。停戦交渉を認める声は民主党からも出ている。

 バイデン氏は米中首脳会談を実現し環境政策など協力できる分野を追求する方針だが、共和党の監視が強まるはずだ。

 米国の混乱の余波は日本も免れない。東アジアの平和を維持するには米国の安定した関与が欠かせない。米国の対外関与がおろそかにならぬよう、日本は米国を導く役割を担うべきだ。