「だいたい法務大臣というのは朝、死刑(執行)のはんこを押しまして、昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職なんです」。あきれたとしか言えない発言だ。そんな意識で法務行政のトップが務まるはずがない▼9日にあった所属する自民党岸田派の会合で死刑執行判断の責務を軽んじるような発言をした葉梨康弘法相が昨日、事実上更迭された。第2次岸田改造内閣では先月、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題で山際大志郎前経済再生担当相が辞任したばかりだ▼葉梨氏は発言を謝罪し、撤回はしたものの、前にも派閥の会合や地元・茨城での会合で同様の発言をしていたという。さらに旧統一教会との関係が大きな政治問題になる中で、こんな言い方もしていた▼「法務大臣になってもお金は集まりません。なかなか票も入りません」と。選挙のことしか頭にないといわれる政治家の姿勢が旧統一教会との関係を生む要因になったのにもかかわらずだ▼政治への信頼を損なっているのは山際氏や葉梨氏だけではない。政治資金を所管する役所の責任者であるはずの寺田稔総務相も、関係する政治団体の不明朗な資金処理が問題視されている。山際氏を更迭した際、岸田文雄首相は国会で「任命責任を重く受け止める」と述べた。相次ぐ閣僚更迭で、今度は首相自身がその言葉の軽重を問われる番になる。(己)