9月まで勤務した西部本社(浜田市)で数回、大人の新聞教室の講師を務め、記者の仕事について語った。白髪頭となった高校時代の恩師の顔もあり、生意気に映ったに違いない▼講話で自然と語気を強めたのが民主主義とメディアの関係について。「2500年前、民主主義の発想はペルシャ辺りで既にあった」と切り出し、でも情報不足で知識の少ない大衆が統治に関わる制度は危険だとして、議論の末に採用されなかったと解説。ではなぜ今、民主主義が成立するのかと展開し、メディアの発達の成果を語る。「社会の種々の事象で功罪を伝え、読者に判断材料や選択の根拠を提供する。新聞の大事な役割」。しれっと業界の存在意義をPRした▼近年は民主主義のもろさを痛感するばかりだ。米国の中間選挙は敗者が開票結果を受け入れるかどうかが取り沙汰され、2年前の米大統領選は政体崩壊さえ危惧した。先日のブラジル大統領選では、敗れた候補の支持者が高速道路の通行を妨害する行為に及んだ▼フェイクニュース、メディア規制と寂しい言葉をよく聞く。お仕着せがましくとも新聞教室に続いて、自由な報道と言論が民主主義を支えていると強調したい▼一見紙切れに過ぎぬ票のおかげで血なまぐさい命のやりとりをしなくて済む。英知の結晶だ。2500年前の議論をつぶさに調べると、それは奇跡のようで、今に照らすと、危うい。(板)