鳥取大医学部(米子市西町)でブータン王国の若手医師、ダワ・ザンポさん(32)が法医学を学んでいる。4年間の研究を経て来春には母国の法医学者になる。「ブータンで変死を究明するためのよりよいシステムをつくりたい」と帰国後の活動に意欲を示している。 (米子総局・坂本彩子)
ダワさんは国立病院で総合診療医として働いていて、2018年に国費留学生として来日した。遺体のコンピューター断層撮影(CT)画像を活用し、死因を究明する「死亡時画像診断(Ai)」に取り組む鳥取大医学部法医学分野の門をたたいた。
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▽法医学の重要性高まる
飯野守男教授の指導の下、死亡時画像の読影を学ぶだけでなく、身元不明の人骨から年齢を推定する研究を進める。9月には鳥取県警科捜研でも研修をし、犯罪捜査での実務経験を積んだ。

インドと中国に挟まれたブータンは、人口約80万人の仏教国。命の生まれ変わりを繰り返す「輪廻転生」の教えが強いため、死因を究明するための解剖は死体を傷つける行為とタブー視する。経済発展やインターネットの普及と共に犯罪数は年々増加し、法医学の重要性は高まるものの、国内には現在2人しか法医学者がいないという。
▽Ai導入を目指す
遺体にメスを入れず、画像から情報を読み解くAiは「解剖に抵抗のある国民にも受け入れてもらいやすい技術」とダワさん。将来的に、現地でのAi導入を目指したいとするものの、現在、医療用CTですら国に4台しかない。CTを法医学にも使うかどうかは、近い将来議論になると考えている。
帰国後は診療活動に携わりながら、死因究明に関する講演会などを通して、国民への法医学の啓発活動に取り組むという。また、犯罪があれば司法解剖が行えるような法整備に貢献したいと考える。
指導する飯野守男教授は「日本で学んだことを活かしながら、祖国の実情にあった死因究明の仕組みづくりを行ってほしい」と期待する。ダワさんは「法医学の重要性を国民と共有し、積極的な死因究明ができるよう環境や法律を整備したい」と話した。