並ぶ料理とともに文書にある献立の解説を聴く参加者=島根県隠岐の島町釜、佐々木家住宅
並ぶ料理とともに文書にある献立の解説を聴く参加者=島根県隠岐の島町釜、佐々木家住宅

 島根県隠岐の島町下西の玉若酢命神社に伝わる文書を基に、遷宮など「ハレの日」に出す食事を再現する試みが27日、町内にある国指定重要文化財の佐々木家住宅であり、質素ながらも味わい深い隠岐の伝統料理が参加者を楽しませた。

 玉若酢命神社社家の億岐家に伝わる「総社(そうじゃ)葺替(ふきかえ)遷宮(せんぐう)諸入用(しょにゅうよう)仕出帳(しだしちょう)」から、1853(嘉永6)年の遷宮神楽の際に提供された夕食。佐々木家住宅の保存修理事業を請け負った吉崎工務店(同町東郷)の食品事業部が文書にあった一汁三菜とご飯を再現した。

 漬物は大根やキュウリのほか、海藻の神葉(じんば)を使い、シイタケとニンジンの入った豆腐あんかけや野菜の煮しめ、おせこ飯と呼ばれたサバを混ぜた炊き込みご飯を出した。

 参加者は、神葉について「最近食べる機会がなかった」と懐かしみ、佐々木家住宅にあった器や膳の美しさを高く評価した。佐々木家住宅がある釜地区の村上英之区長(60)は「煮しめは地区の祭りで出すような味だった。さっぱりしていて、すんなりとおなかの中に入った」と話した。

 食事の再現は、文化財の新たな有効活用を図ろうと町教育委員会が企画し、文化財保護審議会や観光関係者ら13人が参加した。