PK戦の末、クロアチアに敗れ、泣き崩れる後輩たちを鼓舞する長友佑都選手(5)=6日、アルワクラ(共同)
PK戦の末、クロアチアに敗れ、泣き崩れる後輩たちを鼓舞する長友佑都選手(5)=6日、アルワクラ(共同)

 サッカー・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦で日本は前回準優勝のクロアチアに敗れ、またも8強入りを逃した▼歴史を塗り替えるための戦いだったが、あと一歩が遠かった。一瞬の隙を突いて得点する技術、シュートを決めきる力、試合を支配できる司令塔の不在…。互角以上に渡り合ったものの、16強の壁を打ち破る難しさをあらためて突き付けられた▼ただ、過去4度の優勝経験があるドイツ、FIFAランキング7位のスペインに逆転勝利したジャイアントキリング(大番狂わせ)は、間違いなく後世に語り継がれる。森保一監督が掲げた「新しい景色」を見ることはできなかったが、選手たちは、世界の強豪と十分に戦える日本サッカーの新たな時代の到来を感じさせてくれた▼開幕前、吉田麻也主将は「グッドルーザー(よき敗者)はもういい。ウィナー(勝者)になりたい」と口にしていた。前回大会の決勝トーナメント1回戦で、ベルギーに2点を先行しながら逆転負けを許した苦い経験が背景にある。その言葉は熱しやすく冷めやすい性分の私たちにも向けられている気がしてならない。戦いを終えた選手たちが望むのは「惜しかった」「よくやった」といった慰めの言葉ではなく、W杯後も喜怒哀楽をともにして戦い続ける心意気だろう▼勝敗に一喜一憂するだけのお祭り騒ぎから一歩進んだサッカー文化の醸成を願いたい。(文)