昨日、最終回を迎えたTSKさんいん中央テレビで放映されたドラマ『silent(サイレント)』。放送翌日に友人とドラマの感想を語り合ったのは何年ぶりだろう▼主人公の女性が偶然、高校時代の交際相手と再会。男性に一方的に手話で話され、病気で聴力をほとんど失ったことを知り物語は動き出す。登場人物の心の動きが丁寧に描かれ、絶妙な場面で「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」の楽曲が流れるのが心憎い▼ドラマ内の服装や小物で象徴的に使われた青色から、北野武監督の映画『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年公開)を思い出した。せりふの少なさと青い海の静けさが、主人公のろうあの男女のやりとりを際立たせた▼それから22年後、鳥取県が全国初の手話言語条例を制定。手話を「独自の言語体系を有する文化的所産」「ろう者が知的で心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたもの」と定義し、共生社会の実現と、手話の普及や使いやすい環境整備を県や市町村に義務付けた。それを機に全国で制定の動きが進み、講演会や記者会見などで手話通訳者の活躍の場面が増えた▼ドラマを見て「言葉」の存在と伝えること、伝わることの難しさ、素晴らしさが、落ちては消える雪の結晶のようなプレゼントとなって、心に積もっていく気がした。共生社会の成熟につなげたい。(目)