首相官邸で開かれたデジタル田園都市国家構想実現会議=16日午前
首相官邸で開かれたデジタル田園都市国家構想実現会議=16日午前

 安倍政権の看板政策だった「地方創生」が一つの区切りを迎えたとの記事が先日、本紙に載った。政府が新たな地域活性化策として「デジタル田園都市国家構想」の計画をまとめたためだ▼私たちは地方創生の取り組みが始まった当初、東京一極集中を是正するとの目標に少なからず希望を抱いた。あれから8年。一向に実現する気配はなく、残念ながら期待は裏切られた▼東京圏の人口は26年連続で転入者が転出者を上回り、コロナ禍で経済が停滞した2021年でさえ、8万人以上の転入超過となった。政府はデジタル技術の活用で地方移住を促すというが、政府機能の地方移転の話はどこへ行ったのか。政治や経済の中枢が集中したままでは、結局は同じ道を歩むことになるだろう▼一方、地理的ハンディの克服につながるデジタル化は大いに推進してほしいが、地方軽視の道具に使われることがあってはならない。今秋に米子を含む各支社の主要業務や社員を広島市に集約したJR西日本は先週、ダイヤ改正の発表に関し、広島エリア以外の報道機関の質疑は1時間遅れのオンライン説明会で受け付けると通知。地域格差をつけず同時に対応すべきだと抗議したが、人手が足りないとの理由で聞き入れられなかった▼折しも、赤字路線を巡る協議入りを地元に求める同社が掲げるのは「地域共生」。地方目線を忘れて看板倒れにならないか心配だ。(文)