広島市の原爆資料館を見学する「国際賢人会議」の委員ら=11日午前
広島市の原爆資料館を見学する「国際賢人会議」の委員ら=11日午前

 国や地域の利害関係が複雑な問題で、その道の大家が解決策を出し合う集まりのことを、日本語で「賢人会議」と呼ぶ。地球環境の保全を図る目的で1992年に東京で開かれた賢人会議は、竹下登元首相が発起人となった。広島市内で先日あった「核兵器のない世界」へ向けた国際賢人会議も、その一つである▼ウクライナへ侵攻するロシアからを含めた15人の専門家が議論した。座長を務めた白石隆・熊本県立大理事長は、核保有国とそうでない国の分断が深刻だと懸念。核リスク低減に向けた対話「ブリッジング(橋渡し)」が重要と説いた▼考え方が違う国の代表同士が率直に話すことで事態が悪化、あるいは好転する予見性を高めていく。被爆国であり、かつ同盟国の「核の傘」に入る日本の態度が鍵を握るのは言うまでもない▼その日本でも、核を巡る議論の二分化が進む。中国の軍備拡大や北朝鮮の核開発を背景に、やられたらやり返す、やられる前にやる-という姿勢で備える核抑止論を唱える声は小さくない▼そこで、今回の賢人会議が被爆地で開かれた意味をかみしめる。参加者も訪れた広島平和記念資料館の展示や被爆者の声は、戦後77年たった今も「核兵器がある世界」を想起させるに十分な説得力を持つ。この現場を起点に、なお人類に核兵器が必要なのか、核抑止以外のパワーバランス均衡の道はないか、アイデアを出したい。(万)