「お騒がせ男」の本領発揮か。米企業家のイーロン・マスク氏。すったもんだの挙げ句に買収した米ツイッターの全取締役を解任したかと思えば、自身の進退を問うツイッター投票を実施。辞任賛成が過半数を占め、最高経営責任者(CEO)を退任する意向を示した▼そして「史上最大の個人資産の損失」としてギネス認定された。その額、実に約24兆円。ツイッター買収費用に加え、CEOを務める米テスラの株価下落が要因。庶民には想像もできない天文学的な数字で、目まいがしそう▼「そんなに資産があるんだ」とうらやましく思うのは同じでも、こちらの方が現実味がある。「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングが、3月に報酬を改定し、国内従業員の年収を最大で約4割引き上げると発表した▼海外店舗の従業員に比べて国内の従業員の給与は低く、今回の賃金アップで優秀な人材の確保につなげたいようだ。岸田文雄首相が物価上昇率を超える賃上げを経済界に求め、経団連も大幅な賃上げを会員企業に要請する考えで、追随する企業も出るのだろう▼とはいえ、大盤振る舞いができるのは内部留保を抱える大手企業の話。山陰など地方では「お騒がせ男」の損失額のわずかでもこちらに回してほしい、と願う中小企業経営者は多い。〝笛吹けど踊れず〟である。号令だけではなく、大手には取引価格の適正化が求められる。(健)