25年ほど前のことだ。奥川拓二(60)がホームレスになって、3カ月がたとうとしていた。34歳の夏だった。公園や高架下を渡り歩き、その足は帰巣本能のように大阪市旭区の実家に近づく。だが、すでに絶縁されていた両親の元には顔を出せない。仕方なく少し離れた公園で夜を明かした。

 翌朝、水道で顔を洗ってふと見上げると、掲示板に「民生委員」とあって、名前と住所が並んでいる。「困りごと、ご相談ください」。俺、困ってるやん。その一人を訪ねて行った。...