短歌 安部歌子選

許されし面会時間のあっけなく口ごもりつつ息は帰りゆく     松 江 松本 晴子

 【評】コロナ禍で面会時間は限られている。もっと何かを伝えたかっただろう息子さん、それを感じ取る作者。親子の心情が伝わってきて胸を打つ。

くるくると本めくるごと目の前を過ぎゆく枯葉図書館の前     松 江 今村登希子

 【評】風に吹かれている枯葉の様子を本をめくるようだと表現した作者の感性。〝図書館の前〟の設定もいい。くるくるの擬態語に工夫が感じられる。

地球影抜けいでし月煌...