WBCで優勝を果たし、観客に手を振る栗山英樹監督=3月22日、マイアミ(共同)
WBCで優勝を果たし、観客に手を振る栗山英樹監督=3月22日、マイアミ(共同)

 3年半前に出版された一冊の本が今、異例の売れ行きらしい。野球の国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表を優勝に導いた栗山英樹監督が、日本ハムの監督時代に書いた『栗山ノート』。注文殺到で、3万2千部の増刷が決まったという▼自らのプレーを整理するため、小学1年に書き始めた「野球ノート」の〝監督版〟。自身の無力さに絶望する中、「悩む前にできることをやり尽くしたのか」「もっと努力しろ、もっと頑張れ」「もっと人に尽くせ」と自らを叱咤(しった)激励する▼日ハム時代にも日本一になった成功の秘訣(ひけつ)は何か-。栗山監督は以前、経営コンサルタントとの対談で「人に担がれるかどうか」と話していた。「自分が裸になって、何とか一生懸命、この会社を皆のためにやってあげようという真摯(しんし)な姿があれば、能力があろうとなかろうと、手伝ってくれる人は必ず出てきます」▼WBCでは、タイトル保持者でありながら出場機会に恵まれなかった選手もいた。それでもチームが一丸となり頂点に上り詰めたのは、栗山監督の勝利への真摯な姿を認めていたからだろう▼島根、鳥取両県知事選がきのう投開票され、ともに現職が当選を果たした。有権者によって県のリーダーに「担がれた」ことになる。投票した人たちが地域の未来に希望が持てるよう、難題に立ち向かう真摯な姿を貫いてほしい。(健)